日本における生産年齢人口の減少は、企業において早急に対処する必要のある課題です。日本政府はこの課題への打ち手として高度人材ポイント制を設け、外国人技術者の優遇措置を設け積極的な外国人材の取り込みを行っています。
そのため、人事の方の中には、外国人技術者を採用しようと検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、本記事では、外国人技術者(高度人材)とは何かを詳しく説明し、採用によるメリット・デメリットを解説していきます。
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外国人技術者とは
詳しくは、法務省の出入国管理庁のホームページに記載がある通り、外国人技術者とは、専門的な技術力や知識を有する「高度外国人材」のことです。
高度外国人材は一般的に、高度な学術的または技術的なスキルを持ち、日本国内の企業や研究機関で働くために来日する外国人を指します。
高度外国人材は、日本の経済や技術力を向上させ、国際競争力を高めることが期待されています。彼らは、日本における特定の分野での専門知識や経験を持つことが求められ、その分野において日本の企業や研究機関の発展に貢献します。
日本政府は、高度外国人材の受け入れを促進するための制度やビザを整備しています。例えば、高度人材ポイント制を設けることにより、一定以上のポイントに達した人材は高度専門職のビザを取得可能となり、優遇が受けられます。
外国人技術者(高度人材)と技能実習生の違い
外国人技術者と技能実習生の違いは下記のようになります。
外国人技術者 | 技能実習生 | |
学歴 | 大卒 | 中高卒 |
ビザ | 技術ビザ | 技能実習ビザ |
業種 | 技術者としての業務 | 技能実習機構認定業種のみ |
日本語レベル | N4~N3 | N5~N4レベル |
受入可能人数 | 制限なし | 制限あり |
受入可能期間 | 時に決まりはなし | 最大5年 |
受入までの期間 | 2~5カ月 | 6~8カ月 |
就労条件や能力に大きな違いがあることが分かります。外国人技術者はその高度な技術ゆえに国からの優遇措置が多くあることがわかります。
■外国人技能実習生について詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
外国人技術者(高度人材)は3つに分類される
外国人技術者(高度人材)は以下の3つの活動によって分類することができます。
それぞれ詳しく解説していきます。
高度学術研究活動
高度学術研究活動は、高い学術的水準と専門知識を要する研究活動のことを指します。これは、基礎研究や応用研究など、さまざまな分野で行われます。
高度学術研究活動は、新しい知識や理解を生み出し、学問の進歩や技術の発展に貢献することを目的としています。研究者は、自分の分野での知見を深め、問題を解決するために実証的なデータを収集し、分析します。また、学術論文の執筆や学会での発表を通じて、他の研究者との知識共有や批評を行います。
「研究者」「教授」がこれに当たります。
高度専門・技術活動
高度・専門活動は、本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動のことです。
高度専門・技術活動は、さまざまな分野で行われます。例えば、医療、エンジニアリング、情報技術、デザイン、金融などの専門職や技術者が関与する活動が含まれます。これらの活動は、高い専門知識やスキルを要し、高度な技術や手法の適用が求められる場合があります。
高度専門・技術活動は、専門家や技術者が個別のプロジェクトや業務に従事する場合や、組織内でのチームワークによる共同作業として行われる場合があります。これらの活動は、問題解決、設計、開発、研究、分析、コンサルティング、品質管理など、さまざまなタスクや目的を含むことがあります。
高度経営・管理活動
高度経営・管理活動は、組織や企業において高度な経営スキルや管理能力を要する活動のことを指します。これは、経営者や管理職が組織の戦略立案、組織の運営・管理、意思決定、リーダーシップの発揮などを行う活動です。
高度経営・管理活動は、経営の視点から組織全体を俯瞰し、経営戦略の策定や目標の設定を行います。経済や市場のトレンドを分析し、競争力を維持・向上させるための戦略を立案します。また、組織のビジョンやミッションの確立、リソースの配分、市場展開の計画などを行い、組織の成長や発展を目指します。
高度経営・管理活動は、組織内の人々を統率し、リーダーシップを発揮することも含まれます。組織のメンバーとのコミュニケーションや協力関係の構築、チームの組織とマネジメント、意思決定のプロセスの管理など、組織の効率性や生産性を高めるために必要な活動を行います。
外国人技術者が増えている理由
上記の出入国在留管理庁が令和5年6月末に公表した資料によると、在留外国人の数は年々増えています。
また、「技術・人文知識・国際業務」の資格を持つ在留外国人数は、前年と比べて10.9%増加し、346,116人でした。では、なぜ国内で、外国人技術者が増えているのでしょうか。以下に理由を3つ挙げます。
人材不足を解消できる
日本では、少子高齢化により、生産年齢人口の減少が深刻な課題になっています。このような事態に対応するために、企業は積極的に外国人労働者を採用しています。
政府から支援を受けることができる
外国人労働者を雇用すると、企業は政府から補助金または助成金を受け取ることができます。外国人が就労する環境を整備するための助成金や、職務に関連した知識・技能を身につけるための助成金など様々な助成金・補助金があります。
グローバル化に対応できる
海外進出をしている、またはしようとしている企業は年々増えています。それに伴い、現地の文化や情報を熟知している外国人労働者への需要も高まっています。
外国人技術者(高度人材)受け入れによる企業へのメリット
外国人技術者(高度人材)を企業に受け入れることによって、もたらされるメリットはいくつかあります。ここでは、外国人技術者(高度人材)受け入れの利点に関して、以下の5つのメリットについて詳しく説明していきます。
・高度な専門知識とスキルの取得
・グローバル市場への展開
・多様性の促進
・国際的なネットワークの拡大
・人材の獲得競争力の向上
高度な専門知識とスキルの取得
外国人技術者(高度人材)は、異なる国や文化での教育や経験を持っています。彼らは最新の知識や専門的なスキルを持っており、企業にとって貴重な情報源となります。新しいアイデアやベストプラクティスをもたらし、企業の成長や革新に寄与します。また、外国人技術者(高度人材)は高い専門性と、語学力を持っているため、企業に対して高い価値を提供することができるでしょう。
グローバル市場への展開
外国人技術者(高度人材)は、自国(日本)と異なる文化や言語に精通しています。そのため、外国人技術者(高度人材)は、企業が海外市場に参入し、グローバルな展開を図る際に文化的な障壁を取り払ってくれるという点で重要な役割を果たします。
外国人技術者(高度人材)の知識と経験を活用することで、企業は異文化間でのビジネスを円滑に進めることができるというメリットもあります。
多様性の促進
外国人技術者(高度人材)の受け入れにより、企業内の多様性が増し、異なる視点やアイデアが生まれます。異なる文化やバックグラウンドを持つ人々が集まることで、創造性やイノベーションの環境が生まれ、企業に新たな成果をもたらすことがあります。
メルカリや楽天、ファーストリテイリング等のメガベンチャー企業は、外国人人材の積極採用と教育体制の整備を行うことで、企業成長を遂げています。グローバル化が進む今、多様性の確保は企業成長にとって欠かせないものであると考えられます。
国際的なネットワークの拡大
外国人技術者(高度人材)は、自国と異なる国々のネットワークを持っています。外国人技術者(高度人材)のネットワークを活用することで、企業は国際的なビジネスチャンスやパートナーシップを見つけることができます。国際的なネットワークは、企業の成長や新たな取引機会の開拓に役立ちます。
また、日本は少子高齢化により、国内マーケットは今後縮小していくことが見込まれています。そのため、新しいマーケットを求めるために国際ネットワークは重要な役割を担うでしょう。
人材の獲得競争力の向上
外国人技術者(高度人材)の受け入れは、企業にとって人材獲得の競争力を高める要素となります。グローバルで活躍できる層にアプローチすることで、企業は優秀な人材を獲得しやすくなります。また、外国人技術者(高度人材)の受け入れは、企業のブランド価値や魅力を向上させることにもつながります。ファーストリテイリングや楽天はグローバル企業であることをブランド価値として、国外へのリーチを広げています。
外国人技術者(高度人材)受け入れによる企業のデメリット
外国人技術者(高度人材)を企業に受け入れることはメリットのみではありません。自国の労働者とは異なるバックグラウンドを持つことによる弊害はいくつかあります。ここでは、そのデメリットについて解説します。
・言語と文化の違い
・移住やビザの手続き
・適応期間とトレーニングの必要性
・組織文化の調整
・ネイティブ労働者との競争
言語と文化の違い
外国人技術者(高度人材)は、自国と異なる言語や文化を持っています。これにより、コミュニケーションやチームワークにおいて障壁が生じる可能性があります。言語の壁や異文化間の認識の違いは、円滑な業務遂行や効果的なコラボレーションに影響を与える可能性があります。そのため、企業としては外国人技術者(高度人材)の教育訓練の場を設けることが必要不可欠となっています。ただ、外国人技術者(高度人材)が高度人材ポイント制により、一定以上の語学力を有していることが保証されています。
■外国人労働者の文化・価値観の違いに対する対処法に関しては下記の記事で詳しく解説しています。
移住やビザの手続き
外国人技術者(高度人材)の受け入れには、移住やビザの手続きが必要です。ビザの申請や労働許可の手配には時間と費用がかかることがあり、手続きが複雑で煩雑な場合もあります。
もし手続きに誤りがあると、不法就労などの違法行為に問われる可能性があるため、事前に厚生労働省の「外国人の雇用」の規定を確認するようにしましょう。
■外国人採用の各種手続きについては下記の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
適応期間とトレーニングの必要性
外国人技術者(高度人材)が新しい環境や業務に適応するためには、適応期間やトレーニングが必要です。新しい職場や業務に慣れるまでに時間がかかる場合があり、その間は生産性や効率性が低下する可能性があります。新しく外国人人材を受け入れようとしている企業の場合、新たな外国人人材用の教育体制を構築する必要があるため、時間的・金銭的なコストが生じます。
組織文化の調整
異なる国や地域の組織文化は異なる傾向があります。高度外国人材の受け入れにより、組織文化の調整や適応が必要になることがあります。異なる価値観や働き方についての認識の違いが、摩擦や課題を引き起こす可能性があるからです。また、外国人人材を多く採用すると、多様性が生まれる代わりに、企業での統一的な価値観が薄れるため、規律性を重要視する企業には合わない可能性があります。
ネイティブ労働者との競争
外国人技術者(高度人材)の受け入れにより、自国の労働者との競争が生じる場合があります。一部の労働者は、外国人技術者(高度人材)の存在により雇用や昇進の機会が減少することを懸念する場合があります。外国人技術者(高度人材)は高い技術力を保有しているため、ネイティブな労働者の技術レベルを上回る可能性は多くあります。
外国人技術者(高度人材)が受けられる優遇とは
外国人技術者(高度人材)は通常の在留資格では得られない優遇措置が受けられます。以下にその例をいくつかあげます。
就労条件の優遇
●複合的な在留資格の認可
一般的な在留資格では、外国人は特定の活動をすることしか認められません。
例えば、「研究の」在留資格であれば、政府関係気候や企業の研究者としてしか就労できません。しかし、外国人技術者(高度人材)であれば、研究を行いながら、経営やビジネス活動を行うことが可能なのです。つまり、外国人技術者は複数の在留資格をまたがることのできるという優遇を得られます。
●在留期間が5年
外国人技術者(高度人材)は、在留外国人の中で最長の在留期間である5年が一律に付与されます。そのため、他の在留資格よりも長いスパンで日本で働くことができます。また、この期間は更新することも可能です。
●永住許可要件の緩和
日本での永住許可を受けるには、原則として10年以上日本に在留していることが条件になります。
しかし、外国人技術者(高度人材)の場合、永住許可の要件が緩和されます。以下二つがその要件になります。
①外国人技術者(高度人材)として、活動を3年間続けて行っている場合。
②外国人技術者(高度人材)の中でも特に高度(高度人材ポイント80点以上)の外国人技術者(高度人材)としての活動を引き続き1年行う場合。
家族の優遇
●配偶者の就労許可
配偶者の在留資格をもつ外国人が、在留資格の「教育」「技術・人文・国際業務」などの活動を行う際には、在留資格を変更する必要があります。
しかし、外国人技術者の配偶者の場合、これらの要件を満たさなくとも、他の在留資格で許可される活動を行うことができます。
●親の帯同
現在は、就労目的の在留資格で在留している外国人は親の帯同を認められていません。しかし、以下のケースであれば、外国人技術者(高度人材)は当人もしくはその配偶者の親の入国と在留が認められます。
・外国人技術者(高度人材)またはその配偶者の7歳未満の子を養育する場合。
・外国人技術者(高度人材)の妊娠中の配偶者または妊娠中の外国人技術者(高度人材)の介助等を行う場合。
また、さらにこれらのケースに当てはまる場合、外国人技術者(高度人材)は以下の要件を満たす必要があります。
・外国人技術者(高度人材)の世帯年収が800万円以上であること
・外国人技術者(高度人材)と同居すること
・外国人技術者(高度人材)またはその配偶者のどちらかの親に限ること
手続きの簡略化
●入国・在留手続きの優先処理
外国人技術者(高度人材)は入国・在留審査が優先的に処理されます。
・入国事前審査の申請は申請受理から10日以内
・在留審査はの申請は申請受理から5日以内
■通常の外国人在留資格について詳しく知りたい方は下記記事をご覧ください
優秀な外国人技術者を採用するには
ここまで、外国人技術者について詳しく解説してきましたが、実際に優秀な外国人技術者を採用するにはどうすれば良いのか気になった方も多くいらっしゃると思います。
そこで、こちらで優秀な外国人技術者を採用するためのポイントについて解説していきます。
どのような外国人を求めているのかを明確にする
求めるエンジニア像を明確にしましょう。募集、選考、採用をしていく上で求めている人材像が曖昧では、優秀な人材にたどり着きにくくなってしまいます。どのようなスキルを持った人材に、どのような仕事を任せたいのかや、年齢、雇用期間などを明確にした上で詳しい採用計画を立てましょう。また、日本語能力のレベルや持っている資格を採用基準として設定しましょう。
外国人専門の転職サイト・エージェントを用いる
日本や他の国で働きたいと思っている外国人が多く利用しているサイトやエージェントを利用しましょう。そうすることで、より多くの高度人材に募集を知らせることができます。おすすめの外国人人材紹介企業を以下の表にまとめました。
会社名 | 料金 | 料金体系 | ユーザー層 | 実績 |
WILLTEC | 40~80万円/名 | 成果報酬型 | 理系大学・院卒100% | 1300人 |
マイナビ | 要問合せ | 成果報酬型 | 特定技能人材100% | 2250人 |
YOLO WORK | 30~300万円 | サブスク型 | 様々な人材に対応 | 登録者数24万人 |
Bridgers | 要問合せ | 成果報酬型 | 日本語能力試験80% | 3500人 |
GOWELL | 理論年収の35% | 成果報酬型 | 日本在住が8000名 | 要問合せ |
asegonia | 13~135万円 | イベント開催時 | 様々な人材に対応 | 要問合せ |
TOHO WORK | 理論年収の20~25% | 成果報酬型 | 様々な人材に対応 | 要問合せ |
funtoco | 要問合せ | 要問合せ | サービス業に強み | 1000名 |
(※)料金については2023年7月時点の料金を掲載しています。
外国人人材紹介サービスについてさらに知りたい方はこちらをご覧ください。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。本記事では、外国人技術者(高度人材)をこれから採用するか検討中の人事の方に向けて、外国人技術者(高度人材)についての概要と採用によるメリット・デメリットを解説しました。ぜひ、本記事を参考にして外国人技術者(高度人材)の導入をご検討ください。