外国人採用

外国人労働者の文化と価値観の違いによるトラブルとは?具体例と対処法を解説。

外国人労働者の文化と価値観 の違いによるトラブルとは? 具体例と対処法を解説。

人材不足の解消と優秀な人材を確保するために、外国人労働者を積極的に採用する企業も増加しています。

しかし、外国人労働者と仕事をしていく上で、文化や風習の違いからトラブルが生じる場合も珍しくありません。外国人労働者と円滑に仕事を行うためには、仕事に対する常識や価値観の違いを理解し、トラブルを防ぐための対策が重要です。

この記事では、外国人労働者の文化や風習の違いから生じる、

・起こるトラブルとその対処法
・未然にトラブルを防ぐには
・文化の違いを理解する方法

について企業目線で紹介します。

日本で外国人労働者が増えているわけ

日本で外国人労働者が増加している理由について3つあります。

日本でのIT人材不足

現在、日本においてIT関連の人材が不足しているとされており、これは経済産業省の調査結果でも明らかになっています。特に若年層の人口減少と高齢化が進行し、IT関連業界への新規就職者が退職者を下回る傾向にあります。これに伴い、将来的には40~80万人規模のIT人材不足が懸念されています。この背景から、日本のIT業界では外国人エンジニアの需要が高まっています。


出典:)「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 ~ 報告書概要版 ~」経済産業省

IT業界の性質

IT業界は比較的新しい産業であり、従来の日本の年功序列制度などに固執せず、柔軟性があると言われています。エンジニアとしてのスキルと実績が重要視されるため、バックグラウンドに関係なく活躍するチャンスが提供されています。

外国人エンジニアも、多様なバックグラウンドを持つため、この業界で成功する機会が広がっています。また、IT業界は将来性が高く、AIやテクノロジーの進歩によって需要が増加すると予想されており、外国人エンジニアにとって魅力的な職業とされています。

外国人IT人材の受け入れ環境整備

日本政府や企業は、外国人人材の受け入れ環境を整備し、促進する取り組みを進めています。法務省入国管理局は、外国人人材の受け入れ促進のために「高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度」を導入し、外国人ITエンジニアなど高度なスキルを持つ人材に優遇措置を提供しています。

企業側も、英語を社内公用語に切り替えたり、外国人人材を積極的に採用したりするなど、受け入れ環境を整えています。

これらの要因が外国人ITエンジニアの日本での雇用増加に寄与しており、将来的にも外国人エンジニアの需要は高まると予想されています。

文化・風習の違いは一緒に働く上で避けては通れない

外国人労働者の雇用に関連する一般的な課題は、異なる文化的背景や習慣からくる仕事に対する異なるアプローチや、日本の一般的な社会習慣に関する認識の違いがあります。

仮に同じアジア圏出身であっても、食事文化などにおいても国による独自の慣習が存在し、これらが混在する多文化な環境では、相互理解とコミュニケーションが重要となってきます。

そのため、外国人労働者を採用する際には、異なる文化や習慣を尊重し、理解することが必要です。外国人労働者が持つ独自の背景や文化を考慮に入れ、受け入れるための適切な環境を整えることが、円滑な労働環境を構築し、トラブルを未然に防ぐために重要です。したがって、外国人労働者の採用に際して、文化的違いや習慣についての理解と配慮が欠かせない要素となります。

◾️外国人エンジニアの採用についてさらに知りたい方は、こちらの記事をご覧ください
外国人労働者の文化と風習の違いから生じるトラブルとは?対処法も解説!

文化のタイプは2つに分けられる

世界の文化はハイコンテクスト文化ローコンテクスト文化の2タイプに分けられると言われています。この二つのタイプの文化の内容について説明します。

ハイコンテクスト文化

日本は世界で最もハイコンテクストな文化に該当します。

ハイコンテクスト文化とは『言葉以外の意図も察してもらう文化』で、「空気を読む」や「察してもらう」などが挙げられ、はっきりと言わないといった特徴があります。

日本人同士では、空気を読んだり、以心伝心に頼るコミュニケーションが一般的です。反対に空気が読めないとKYと非難されることもあります。

ローコンテクスト文化

一方でローコンテクスト文化とは欧米人などが該当してきます。

簡単に言うと『全て言語化する文化』で、「イエス・ノーをはっきり言う」などの特徴があります。また、ローコンテクスト文化は厳密で、シンプル、明解なコミュニケーションが好まれます。

外国人労働者の国別の文化・風習の違い

厚生労働省の令和4年10月末時点の「外国人雇用状況」の届出まとめによると、日本で就労する外国人労働者の国籍の内訳は以下のようになります。

外国人労働者の文化と風習の違いから生じる課題とその対処法とは?

ベトナム 25.4%(462,384 人)
中国 21.2%(385,848 人)
フィリピン 11.3%(206,050 人)

この主要3カ国それぞれの文化・風習についてみていきましょう。

【参考文献】「厚生労働省の令和4年10月末時点の『外国人雇用状況』」厚生労働省

ベトナム人の特徴

まずはベトナム人の文化や風習についてみていきましょう。

ベトナム人が一番大切にしているのは家族」です。
家族には自分の家庭だけでなく、親、兄弟、祖父母、親族まで含まれ、祖父母の命日には仕事を休み、実家へ帰省することも珍しくありません。
仕事を最優先している日本人にとってはなかなか馴染みがないことかもしれません。

また、ベトナム人はフレキシビリティのある職場環境を好みます。
ベトナムに行くと日中の勤務時間にカフェで仕事や会話をしている人が多くいるのをみた人もいるのではないでしょうか。

家族想いなところやフレキシブルな職場を好むことからもわかるように、ベトナム人は長時間労働や休日の出勤を好まない傾向があります。
なので、残業や休日出勤の強要はできるだけ控えるようにしましょう。

最後に、勤勉さ器用さもベトナム人の特徴で向上心の高い人が多いです。
そのためか、成果主義の個人プレーが多く見受けられやスキルアップへの強いこだわりが見受けられます。

◾️ベトナム人エンジニアについてまとめた記事があるので、ご興味があればぜひご覧ください
今注目されているベトナム人エンジニアの特徴とは?メリット・採用方法など解説

中国人の特徴

次に中国人の文化や風習をみていきましょう。

中国人は仕事に対して、過程よりも結果」を重視します。
結果が出せれば過程はある程度雑になっても仕方がないといった考え方です。
そのため、「中国人の仕事は雑だ」という話を聞くことがありますが、もちろんわざと雑な仕事をしているわけではありません。わかりやすく言うと、見た目の良さよりも味の良さを重視しているということです。

また、仕事を優先する日本人に対して、中国人はプライベートを優先します。
日本の風習として、仕事を優先しすぎるあまり、プライベートの時間を削り仕事に費やす傾向にあります。対して中国人はベトナム人と同じように家族や恋人との時間を大切にしており、プライベートを優先しています。

最後に、最も印象的なことはなんでも率直に答えるところでしょう。
「これはあなたには似合わない」「この企画はここがダメ」といったように、日本人なら言いにくいようなこともキッパリと言うことができます。こういったことを言われると嫌な印象を持ってしまうかもしれませんが、決して悪気はありません。

この率直さと関連することで、上司ともフラットな関係でいたいと思う中国人が多いので、仲が深まれば職場でも敬語を使わないこともあるでしょう。

◾️中国人エンジニアについてまとめた記事があるので、ご興味があればぜひご覧ください
中国人エンジニアを採用するためには?魅力や注意点、採用手順について解説

フィリピン人の特徴

最後にフィリピン人についてみていきます。

ベトナム人、中国人同様、フィリピン人も家族」をとても大切にしています。
大家族が多いフィリピンでは、家族を扶養するために海外で働き、送金をすることで家計を支えていることが多いです。また、仮に仕事中に家族に係わる問題や用事ができた場合、仕事を抜けて家族の元へ向かうのは当然であり、仕事を優先に家族を後回しにするという考え方はありません。

また、フィリピン人はフレンドリーな人が多く、かつホスピタリティ精神の高い人が多いです。初対面の人にも親切で心地よいコミュニケーションを取ることができます。

◾️フィリピン人エンジニアについてまとめた記事があるので、ご興味があればぜひご覧ください
フィリピン人エンジニアを採用するメリットは?募集方法や注意点をご紹介

以上がベトナム人、中国人、フィリピン人の文化・風潮になります。
上記の中には書きませんでしたが、三つの国に共通して人前で叱られることを嫌っている傾向にあります。これらのことを抑えて想定されるトラブルや対処法を考えてみましょう。

外国人労働者の文化・風習の違いにより想定されるトラブル

ここでは日本と外国の文化の違いによって想定されるトラブルについてみていきましょう。

・コミュニケーショントラブル
・時間に対する考え方の違い
・定着しない
・報・連・相がない

以上の3つのトラブルについて詳しく説明します。

コミュニケーショントラブル

一つ目はコミュニケーショントラブルです。

やはり言語の違いがあるだけに、意図した言葉と違う形で受け取られてしまったり、何を伝えたいのかなかなか伝わって来なかったりします。

そうすると仕事効率の低下生産性の低下モチベーションの低下に繋がりかねません。

■外国人労働者の日本語教育については下記の記事で詳しく解説しています。

外国人労働者の日本語教育の現状とは?具体的な方法や注意点を解説

時間に対する価値観の違い

時間に関する価値観の違いが、外国人労働者とのトラブルの原因となることがあります。

たとえば、日本では時間に対する正確性が重要視され、出勤時間や休憩時間を厳密に守ることが一般的です。しかし、他の国々では時間に対するアプローチが異なり、公共交通機関の遅れなどが一般的である場合もあります。これが、外国人労働者が遅刻や就業時間を守らない可能性を高める要因です。

残業の概念にも違いがあり、日本では長時間労働が一般的であり、これが勤勉さや責任感の表れとされ、忠誠心や奉仕精神を示すものと見なされてきました。しかし、他の国々ではプライベートの時間を重要視し、労働時間外の時間を家族や趣味に充てることが一般的です。また、生産性や効率性が重視され、労働時間よりも成果と効率の向上が重要視されているので、外国人労働者を雇用する場合、時間に関する異なる価値観を明確にし、共通の理解を築くことが必要です。

また、なぜ残業が行われるのか、その背後にある目的や理由を説明することで、トラブルを予防できます。異なる文化や習慣に対する理解とコミュニケーションは、外国人労働者の順応と職場での円滑な協力に不可欠です。

定着しない

外国人を雇用する時になかなか定着しないという声を聞きます。

厚生労働省の「直接雇用の外国人労働者の入職、離職状況」によれば、
約45%の外国人が離職しているような状況になります。

採用に際してかかる時間やコスト、日本人よりも複雑な書類の取り扱いなどを考慮すると定着しないというのは企業としてとても痛手になります。

◾️外国人社員を定着させたい方はぜひこちらの記事をご参照ください
外国人社員を定着させるには?定着しない理由や定着させる方法を解説

【参考文献】「直接雇用の外国人労働者の入職、離職状況 」厚生労働省

報・連・相がない

報・連・相がなされないという問題を経験した人も少なくないでしょう。
報・連・相の徹底は日本企業によくみられますが、海外では「くどい」とされています。

上司への報・連・相は大事ですが、日々多くのメールをさばく上司に対してこまごまと報告すると鬱陶しがられてしまいます。

また、海外では仕事への裁量権を持たされている場合が多く、こうした習慣はあまり定着していません。そのため報・連・相がなく困る上司が多いと考えられます。

外国人労働者の文化・風習の違いにより起こるトラブルを防ぐために

では、上記のようなトラブルを防ぐためにどのようなことをすれば良いのでしょうか。
以下のような施策が考えられます。

・言語サポート
・給料や労働時間を見直す
・積極的なマネジメントをする

言語サポート

日本で働く外国人は、ある程度日本語能力を備えてスタートしていることが多いですが、本格的なビジネスの場になると会話や資料の読み取りに時間がかかることがあります。

なので、日本語のサポートは、外国人社員が従事できる仕事の幅を広げるだけでなく、職場におけるコミュニケーションのストレス軽減につながります。

パーソル総合研究所の「留学生の就職活動と入社後の実態に関する定量調査結果報告書」によると、言語サポートが就業意欲にポジティブな影響を与えることがわかっており、外国人社員の定着率の向上にも有効な方法であることが証明されています。

具体的な取り組みとしては、研修によってビジネス用語や専門用語を教えることや、勉強会を開催する、資格の資金的支援、社内資料に外国人社員の母国語を併記するなどが考えられます。

【参考文献】「留学生の就職活動と入社後の実態に関する定量調査結果報告書」パーソル総合研究所 × CAMP

給料や労働時間を見直す

外国人だからといって低い給料で雇用しようとすると人材は定着しません。

特に、技能実習生や特定技能外国人を不当に低い給料で雇用する事例が問題となっています。

評価基準のところでも記載しましたが、海外は成果主義をベースとした評価制度を採用している企業が多く、外国人社員も能力や成果に応じて適切な評価が行われているかを重要視しています。

成果や実力に見合った給料を支払うことで、外国人社員は仕事へのモチベーションを高め定着するだけでなく、より成果を追求してくれるでしょう。

また、各国の文化・風習のところでも記載しましたが、外国人は家族との時間やプライベートを重視する傾向にあります。残業の強要や帰りにくい雰囲気の組織風土などは働く上でネガティブなポイントとなりかねません。

外国人労働者の定着を機に、業務の効率化や残業時間の削減を進めてみてはいかがですか。外国人の定着だけでなく、日本人社員のモチベーションの向上にもつながるのではないでしょうか。

積極的なマネジメントをする

最初の1、2ヶ月ほどである程度の能力を把握し、報・連・相の程度を話し合って決めましょう。

また、報・連・相を待つ受動的なマネジメントではなく、積極的な問いかけによる能動的なマネジメントに切り替えることも効果的です。

なぜなら、ヒューマンホールディングスの調査によると、外国人労働者が離職する際の理由として最も多いのが「上司のマネジメントに対する不満」だからです。積極的に部下の状況を聞きに行くことで離職率も引き下げられるかもしれません。

【参考文献】「【共同調査】日本で働く外国籍人材の超早期離職率28%、モチベーションダウン率53%の実態とは? ~日本国内の就労者受入れで工夫すべきポイントを調査~
」ヒューマンホールディングス株式会社

外国人労働者の文化を理解する

外国人労働者を効果的に受け入れるために、彼らの文化背景やコミュニケーション方法の違いを理解するための教育が必要です。多くの企業は、外国人労働者向けに次のような工夫を行っています。まず、日本の価値観ではなく、企業自身の理念やルールを教育し、説明することが一般的です。また、「常識」として受け入れることが期待されないため、細かいことも説明します。宗教や文化に配慮した職場環境を整え、祈祷部屋や食堂の食材表示など、異なる宗教や文化に対する配慮を行います。

外国人労働者への日本文化教育

これまではこちらが外国人労働者について理解するという角度で話してきましたが、外国人労働者にも日本の文化について理解してもらう必要があります。

異文化理解研修では日本の文化や商習慣について知ってもらいましょう。

この時に最も大切なのが、日本の文化や商習慣を一方的に押し付けるのではなく、なぜこのような文化や商習慣があるのかその背景について深く理解してもらうことです。

そして、異文化理解研修の最も素晴らしい点は、外国人社員からも外国の文化や商習慣を聞くことができる点にあります。
異文化理解研修の機会を使ってお互いのことを深く理解しましょう。

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まとめ

外国人労働者の文化の違いによってもたらされるトラブルやその対処法についてまとめてきました。

何よりも大切なことは外国人労働者に歩み寄り理解する姿勢です。
組織としてどうありたいのかを見つめ直し、お互いの理解を深めましょう






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