近年、人材不足などの影響から、外国人労働者の採用を実施する企業が多くみられるようになってきました。企業の採用担当の方の中では、外国人労働者の雇用・受け入れを検討する方も少なくないのではないでしょうか。
一方で、
・建設業で外国人を雇用する際に必要な在留資格がわからない
・外国人を雇用する際の流れがわからない
・外国人を雇用する際に注意すべきことがわからない
など、さまざまな疑問を持つ方も多いと思います。
本記事では、建設業で外国人を採用する際に知っておくべき、
・建設業の外国人労働者の現状
・会社にもたらすメリット、デメリット
・建設業での採用に必要な在留資格7つ
・雇用の方法、流れ
まで、企業目線で幅広くご紹介します!
建設業界での外国人労働者の実情
建設業界では、技能習得や労働力不足を補うために外国人労働者の需要が高まっています。その需要に応えるように、外国人労働者数は年々上昇しています。
建設分野における外国人材の受け入れ状況
建設分野で働く外国人の数は、2023年の10月末時点では14万4981人で、全産業の約6.4%に相当します。その中で、約8万人の技能実習生が働いています。
特定技能外国人の数は、水際措置の緩和や制度の周知が進むにつれて増加しています。2022年4月には、建設分野で初めて2号特定技能外国人が認定されました。
【参考文献】建設分野における外国人材の受入れ 国土交通省
建設業での外国人雇用のメリット・デメリット
外国人を採用するメリットとデメリットについてそれぞれ解説します。
外国人採用のメリット
外国人を採用するメリットは以下の4つがあります。
・人手不足(特に若い世代)の解消
・労働環境の変化と社内の活性化
・優秀人材の確保
・海外進出の足掛かり
人手不足(特に若い世代)の解消
日本国内で適切な人材が集まらない場合、外国人労働者を採用することで人手不足を解消できます。外国人は企業の所在地や知名度にそれほどこだわりませんので、中小企業でも優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。
【参考文献】「建設投資、許可業者数及び就業者数の推移」厚生労働省
外国人労働者の雇用は、人材不足の改善と作業効率の向上に寄与する可能性があります。特に、20~30代の体力のある若い世代の外国人労働者を採用することで、これらの課題に対処できます。
労働環境の変化と社内の活性化
外国人労働者の受け入れ制度を導入することで、国籍に関係なく全従業員が快適に働ける環境を整える必要があります。外国人労働者を雇用する際には、日本語が不自由な場合でも理解できるよう、わかりやすく体系立てた教育が必要です。
外国人労働者向けに整備した教育システムは、その後の日本人従業員の教育にも大いに役立ちます。
例えば、多言語の業務マニュアルや労働時間管理の方法を導入することで、外国人だけでなく日本人の労働環境も向上させることができます。
優秀人材の確保
日本の少子高齢化により、優秀な人材の獲得が困難になっています。競争が激化する中、外国人労働者を積極的に採用することで、優秀な人材を見つけられる機会が増えます。特に、外国人労働者は多様なスキルや経験を持ち合わせており、企業に新たな価値をもたらす可能性があります。
海外進出の足掛かり
海外進出を目指す企業にとって、外国人労働者を採用することは大きな利点があります。海外展開において言語能力は非常に重要であり、外国人は多くの言語を話せる場合が多いです。また、異なる文化や風習に精通しているため、海外での事業展開において重要なサポート役となるでしょう。
外国人採用のデメリット
外国人を採用するデメリットは以下の2つがあります。
・言葉や文化の違いによるコミュニケーション障害
・受け入れまでにかかる時間
言葉や文化の違いによるコミュニケーション障害
異なる文化や習慣を理解しないと、予期せぬ問題が発生する可能性があります。無意識のうちに相手を不快にさせたり、場合によっては法律違反につながることもあります。円滑なコミュニケーションを図るためには、お互いが異文化を理解し受け入れることが必要です。
外国人労働者の日本語能力について知りたい方はこちらの記事をご覧ください
受け入れまでにかかる時間
外国人従業員のビザ発給には時間がかかるため、採用から受入れまでに時間が必要です。外国人の受け入れや技能実習生・留学生の採用にあたり、事前に就労ビザの申請や手続きが必要です。そのため、ビザ発給に関する情報や必要書類を事前に把握しておく必要があります。
建設業で働ける在留資格
建設業で働ける在留資格にはどのような資格があるのでしょうか。
建設業で雇用できる在留資格を7つ紹介
建築業で雇用できる在留資格は主に以下の7つがあります。
・特定技能1号・2号
・技能実習
・技術・人文知識・国際業務
・身分に基づく在留資格
・技能
・資格外活動許可
・外国人建設就労者(特定活動32号)
特定技能1号・2号
2019年4月に、人材不足解消の一環として導入された在留資格が「特定技能」です。特定技能の取得には申請手続きが必要であり、「日本語試験」と「建設分野特定技能1号評価試験」の両方に合格する必要があります。また、日本の建設業界で3年以上の実務経験があれば取得できます。そのため、建築業界で特定技能を持つ者を雇用することは、即戦力となるでしょう。
特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、取得できる期間や要件は技能水準や日本語能力によって異なります。特定技能1号では最大で5年間の在留が可能であり、特定技能2号では在留期間に制限がありません。
特定技能では、以下の表の業務に従事できます。
【参考文献】概要、関係資料【特定技能制度(建設分野)】国土交通省
■特定技能(1号・2号)については下記の記事で詳しく解説しています。
業務区分は、
・【土木】
・【建築】
・【ライフライン・設備】
の3つです。一つの区分で特定技能の資格を取得すれば、その区分内のすべての作業に従事できます。
土木
土木区分では、指導者の監督のもと、型枠施工や鉄筋施工などの土木工事全般に従事することができます。具体的には、コンクリートの圧送、トンネル工事、建設機械の操作、一般土木作業、海洋土木工事などが含まれます。
建築
建築区分では、同様に指導者の監督のもと、建築に関連する型枠施工、鉄筋施工、建築大工仕事などに従事します。具体的には、左官作業、コンクリートの圧送、屋根ふき、鉄筋の加工・取り付け、内装仕上げ、表装、とび職、建築板金、断熱材の吹き付けなどが含まれます。また、新築、増築、改築、移転、修繕、模様替えに関する作業も行います。
ライフライン・整備
ライフライン・設備区分では、指導者の監督のもと、電気通信工事、配管工事、建築板金、保温・保冷工事などに従事します。これには、ライフラインや設備の整備、設置、変更、修理などの作業が含まれます。
技能実習
技能実習制度は、外国人が日本で技術を学び習得するための枠組みであり、企業単独型と団体監理型の2つの受け入れ方式が存在します。この制度は、技能習得の段階に応じて3つの期間に分かれており、それぞれに対応した在留資格が設定されています。
【参考文献】外国人技能実習制度とは JITCO
まず、入国後1年目は技能の基礎を修得する期間であり、「第1号技能実習」と呼ばれます。この期間には、企業が単独で技能実習生を受け入れる場合と、団体が技能実習生を監理する場合があります。企業単独型の場合は「第1号企業単独型技能実習」と呼ばれ、在留資格は「技能実習第1号イ」となります。一方、団体監理型の場合は「第1号団体監理型技能実習」と呼ばれ、在留資格は「技能実習第1号ロ」となります。
次に、入国後2年目と3年目は技能の習熟を目指す期間であり、「第2号技能実習」と呼ばれます。この期間も企業単独型と団体監理型に分かれ、企業単独型は「第2号企業単独型技能実習」として在留資格は「技能実習第2号イ」、団体監理型は「第2号団体監理型技能実習」として在留資格は「技能実習第2号ロ」となります。
さらに、入国後4年目と5年目は技能の熟達を目指す期間であり、「第3号技能実習」と呼ばれます。企業単独型は「第3号企業単独型技能実習」として在留資格は「技能実習第3号イ」、団体監理型は「第3号団体監理型技能実習」として在留資格は「技能実習第3号ロ」となります。
なお、第1号技能実習から第2号技能実習へ、また第2号技能実習から第3号技能実習へと移行するためには、実習生が所定の試験に合格する必要があります。第2号への移行には学科試験と実技試験の合格が必要であり、第3号への移行には実技試験の合格が求められます。加えて、移行が認められる職種と作業は主務省令で定められています。
■技能実習については下記の記事で詳しく解説しています。
特定技能と技能実習10個の違い!移行もできる?メリットなど徹底比較
資格外活動許可
「資格外活動許」とは、本来は就労が禁止されている在留資格である「留学」や「家族滞在」などの方が申請をすると、1週間につき28時間以内で就労が可能です。単純作業にも従事できます。
留学生採用について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください
技術・人文知識・国際業務
「技術・人文知識・国際業務」とは、建築や設計に関する専門知識を専門学校や大学で学んだ、もしくは10年以上の実務経験がある外国人が得ることのできる在留資格です。施工管理や製図、設計等の技術職、また営業職や事務職などに従事できます。
専門学校や大学で土木建築に関することを学んだ外国人であれば、施工管理業務や設計業務に関する就労が認められます。また営業職や事務関連の仕事であれば、土木建築に関して学んでいなくても大学を卒業していれば就労可能です。
技能
「技能」は、日本以外の建築様式に関する技能や知識を持つ外国人に与えられています。国内でゴシックやバロックなどの建築様式を利用した建築や修繕を目的とした資格ですので、単純労働などの目的で雇用することはできません。取得するためには、5〜10年の実務経験が必要となります。
身分に基づく在留資格
特殊な在留資格として、身分または地位にもとづく在留資格があります。これは、日本での活動制限や在留期限のない在留資格ですので、建設業に限らず就労できます。
身分または地位にもとづく在留資格としては「永住者」および永住者の「配偶者」「子ども」「特別永住者の配偶者」「日本人の配偶者」または「特別養子」「日本人として出生した子ども」があります。
建設業で外国人を採用する3つの方法
次には、実際に外国人労働者を採用する方法を解説します。主に以下の3つの方法があります。
・人材紹介サービスの利用
・メディアの利用
・紹介
人材紹介サービスの利用
まず、最も一般的なのが人材紹介サービスの利用です。サービスによってどのようなユーザーが利用しているのかが異なるため、自社がどのような人材を求めているのか整理し、適切なサービスを選びましょう。
■おすすめの外国人紹介サービスは下記の記事で詳しく解説しています。
外国人人材紹介会社おすすめ8選徹底比較!料金相場、メリットなどご紹介
メディアの利用
次に、各種メディアの利用という方法があります。自社のオウンドメディアやSNSからアプローチし、直接採用まで繋げます。
自社のオウンドメディアでは、SEO対策が重要です。検索順位を最適化することで、自社のメディアを多くのユーザーに見てもらう必要があります。
SNSに関してはInstagramやXを使った広報活動、求人者へのDMでのアプローチが挙げられます。
紹介
誰かに紹介してもらう方法もあります。社内にすでに外国籍の従業員がいれば、その個人経由で求職者を紹介してもらうのです。
母国を離れた外国人労働者は、日本において同じ国籍のコミュニティなどがある可能性もあり、すでに知り合いであればコミュニケーションをとりやすいでしょう。
■外国人労働者の募集方法や企業例などは、下記の記事で紹介しています。
外国人採用の手続きは?注意点や費用・期間、成功企業の事例、メリットを紹介
企業が外国人採用をする基本的な流れ
では実際に、外国人を採用する際の流れを簡単にご紹介します。主な流れは以下のとおりです。
・在留資格の確認
・面接、内定
・就労ビザの取得
・受入れの準備
・雇用後の手続き
1.在留資格の確認
建設業で外国人が働くには、先に述べた在留資格が必要です。
国内にいる外国人を採用する際には、在留カード上で、在留資格の種類、在留期間の満了日、資格外活動の許可の有無を確認しましょう。
海外にいる外国人を採用する際には、在留資格を取得する見込みがあるのか、その取得要件を理解できているかを確認しましょう。
現在の在留資格が条件を満たさない場合は、在留資格の変更手続きを実施する必要があります。
2.面接・内定
必要な在留資格の取得見込みがある、もしくはすでに取得できている場合は、面接を実施し内定を出します。その後、雇用契約書を作り本人へ通知します。
雇用契約書の内容自体は、その人の母国語で書かれた雇用契約書を用意する必要があります。
■外国人採用における面接のポイントに関しては下記の記事で詳しく解説しています。
外国人採用面接での注意点とは?面接の流れ、NG質問例や在留カードも解説!
3.就労ビザの申請
海外にいる外国人を雇用する時は、就労ビザの申請を行います。
その流れは以下のとおりです。
1.企業が「在留資格認定証明書」の交付申請を出入国在留管理庁に実施する
2.内定者に在留資格認定証明書を送付する
3.内定者が在留資格認定証明書を持参の上、本国の在外公館でビザ申請を行う。
4.受入れの準備
就労ビザを取得した後、入社日を決定し受入れの準備を進めていく必要があります。主な準備すべきことは、以下の4点です。
・上司や同僚となる従業員への研修
・教育、研修カリキュラムの準備
・住居の手配
・住民票の取得などの各手続きの案内
上司や同僚となる従業員への研修
上司や同僚となる従業員への研修を行いましょう。研修では、外国人労働者の教育の手順や価値観の違いなどの理解すべきことを伝えましょう。
外国人は、慣れない環境での生活で悩みを抱え込んでしまうことがあります。そうならないように、上司や同僚が価値観や文化の違いを理解しサポートをしましょう。
教育・研修カリキュラムの準備
教育・研修カリキュラムの準備も大切です。研修は、日本で働くために必要な知識や日本の文化や生活を理解するために行います。具体的には、ビジネスマナーや日本語の教育、労働関係の法律、生活情報の提供などです。
また、属人的となっている業務をマニュアル化し、誰が教えても変わらないようにしましょう。その際、できる限り具体化し、解釈の違いがないようにする必要があります。
住居の手配
外国人が自分で住居を確保するのは、非常に難しいことです。企業側が社員寮やアパートを借りて提供する方法や外国人本人が借りるのをサポートする方法が挙げられます。
それぞれ、メリットやデメリットがあるのでどの方法が自社にあっているのかよく検討しましょう。
住民登録などの各手続きの案内
2012年7月9日以降、日本人と同様に外国人も住民票が作成される制度に変わりました。
そのため、住居が決まったらその住所を管轄する市町村役場で登録を行う必要があります。これは外国人本人が行うことなので、案内をしましょう。
また、携帯の契約や銀行口座の開設の案内もしましょう。これらの契約にあたって、パスポートや在留資格、社員証、印鑑などが必要になります。外国人本人だけでこれらの手続きをこなすのは大変なので、サポートが必要です。
■携帯の契約や銀行口座の開設の手続きについては下記の2つ記事でそれぞれ解説しています。
外国人労働者におすすめの携帯契約は?雇用企業にできるサポートまで徹底解説!
5.雇用後の手続き
無事に就労ビザの審査が通れば晴れて就業開始となりますが、最後にハローワークへの届出が必要になります。
雇用保険に加入する場合は雇用保険の資格取得届をハローワークに提出します。
雇用保険に加入しない場合は、外国人雇用状況の届出を出します。
■外国人雇用の手続きについては下記の記事で詳しく解説しています。
外国人の雇用手続きの流れは?必要書類や採用前の注意点について解説
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まとめ
いかがでしたでしょうか。本記事では、建設業での外国人労働者の概要やメリット、デメリット、在留資格の種類、採用の流れなどを解説しました。
外国人労働者を採用することは、人材不足の解決だけではなく社内のグローバル化、活性化にも良い影響を与えます。この記事が外国人労働者の採用を検討する一助になれば幸いです。