[企業向け]外国人が退職した際の手続きについて!日本人と外国人で徹底比較
→【企業向け】外国人の退職手続き|日本人と外国人を徹底比較
最近では国内の人材不足が原因で海外から労働者を採用している企業も少なくないのではないでしょうか。そのような中でもし外国人が離職してしまった場合、外国人特有の手続きはあるのでしょうか。この記事では、
・企業・本人それぞれが行う続き
・雇用保険はどうなるか
・帰国する時の手続き
・手続きに当たって注意点
などについて企業目線で詳しく解説していきます。
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【日本人の退職と同様】外国人労働者が退職する際に企業が行う手続き
外国人が離職する際にも日本人と同様の手続きがいくつかあります。
それは以下の4つです。
1.健康保険の被保険証の回収
2.雇用保険の離職票の交付
3.源泉徴収票の交付
4.住民税の未納残額がある場合の手続き
5.健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届の提出
それぞれ詳しく解説していきます。
健康保険の被保険者証の回収
以下の手続きは健康保険に関する被保険者証の回収手続きです。
健康保険の被保険者証とは、一般的には健康保険証のことを指します。外国人労働者でも特定の条件を満たす場合、健康保険に加入が義務づけられています。そのため、退職するときには、健康保険を含む社会保険からの脱退手続きが必要になります。
つまり、退職日の翌日からは健康保険が利用できなくなります。そのため、退職後も誤って既存の健康保険を使用しないように、健康保険証を退職日当日までに回収する必要があります。
また、回収した健康保険証は、退職後5日以内に健康保険組合に提出する必要があります。もし外国人労働者が健康保険証を紛失している場合、被保険者証の回収不能または減失の届け出を提出する必要がありますので、それにも注意してください。
雇用保険の離職票の交付
離職票は、雇用保険の基本手当(失業給付)を受けるために必要です。
雇用保険の被保険者資格喪失手続きには、ハローワークへ提出すべき書類が2つあります。
「雇用保険被保険者資格喪失届」
「離職証明書」(離職票が必要な場合のみ)
離職票を必要としない場合でも、基本的には両方の書類を提出することが推奨されます。雇用保険被保険者資格喪失手続きは、退職日の翌日から10日以内に、所属する事業所を管轄するハローワークに提出しなければなりません。タイムリーな提出が求められます。
源泉徴収票の交付
源泉徴収票の発行も重要な手続きの一つです。源泉徴収票は、外国人労働者が退職する際、確定申告や新しい雇用先での年末調整に必要な文書であり、これを提供しなければなりません。
また、源泉徴収票の発行は、所得税法により事業主に義務づけられています。したがって、本人からの要求がなくても、退職後1か月以内に源泉徴収票を提供する必要があります。
もし法令に違反して源泉徴収票を提供しない場合、1年以下の懲役または20万円以下の罰金が科される可能性があることに注意が必要です。
住民税の未納残額がある場合の手続き
住民税は、通常、会社が従業員の給与から天引きし、市町村に支払う「特別徴収」という方法で徴収されます。しかし、外国人労働者が退職すると特別徴収が行われなくなるため、市町村に退職の届け出を行う必要があります。
この届け出により、退職者に対して住民税の通知が送られ、退職者自身が住民税を支払うことになります。その後、新しい雇用先で再び特別徴収が行われる場合、新たな雇用先が特別徴収の手続きを行います。
この手続きには「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」という書類を提出する必要があります。提出期限は退職後で、できるだけ早く提出することが求められます。提出は退職時の居住地の市町村に対して行われ、持参または郵送の方法で行うことができます。
また、前年中に転居した場合は、転居前と転居後の両方の市町村に届け出る必要があることや、1月から5月に退職する場合には住民税が一括徴収されることに留意する必要があります。
健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届の提出
外国人労働者が退職した後、5日以内には、健康保険と厚生年金の被保険者資格喪失届を提出しなければなりません。この届け出を行う際に、失くしてしまった健康保険証明書(もしくは、紛失した場合は被保険者証の回収不能または減失の届け出)を添付する必要があります。所属する年金事務所または健康保険組合に提出するものになります。
必要な届出フォームや詳細情報は、該当する年金事務所または健康保険組合のウェブサイトで確認できます。
【外国人離職特有】外国人労働者の離職時に企業が追加で行う手続き
次に外国人労働者が退職する際に日本人の手続きに追加で行う必要のある手続きを紹介します。
外国人労働者の離職時、特有の手続きは以下の通りです。
・外国人雇用状況の届出
・雇用保険被保険者資格喪失届と必要書類を作成・提出
・在留カード番号記載様式の提出
それぞれ詳しく説明します。
退職証明書の作成・交付
退職証明書は、転職時や海外での就業時にも必要になります。
これは、労働基準法第22条に基づき発行されるものであり、離職証明書(企業がハローワーク宛てに提出する文書)や離職票(ハローワークから提供される文書)のような公的文書ではなく、各企業が独自に発行するものです。退職者がその交付を請求する場合にのみ発行されます。
重要な点として、退職証明書には退職者が請求しない情報を記入してはいけません。
つまり、退職者が要求した情報のみが記載されます。
一般的に退職証明証は以下の情報を記載します。
・雇用期間
・担当業務の種類
・在職中の地位
・支給された賃金
・退職の理由(解雇の理由)
退職者が希望しない情報を記載することは法律で禁止されています。
以下が退職証明書のフォーマット例になります。
出典:)「すぐに使える退職証明証テンプレート集」ビズ研
また、身分系の在留資格(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)を持つ外国人への退職証明書の交付は不要です。
外国人雇用状況の届出(必要な場合)
外国人が退職する際には、離職日の翌日から10日以内に「外国人雇用状況の届出」を管轄のハローワークへ提出する必要があります。
届け出方法
外国人雇用状況の届出の提出方法は以下の通りです。
・直接ハローワークに提出
・電子申請
届け出方法は、直接ハローワークに提出するほか、電子申請を行うこともできます。
電子申請の場合は、厚生労働省の「外国人雇用状況届出システム」を使用します。
また、利用にはIDとパスワードが必要ですが、以前に一度でもハローワークの窓口経由で外国人雇用状況の届出を行った事業者の場合は、外国人雇用状況届出システムの新規登録ボタンからのID登録ができません。その場合には、ハローワークに問い合わせて、オンライン提出に切り替えることが可能です。
しかし、「雇用保険被保険者資格取得届」又は「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出すれば、外国人雇用状況の届け出を行ったことにるため届出は不要です。
また、外国人雇用状況の届出を行わない場合は、中長期在留者の受け入れに関する届出を入国管理局へ提出します。
退職者が雇用保険の被保険者の場合
雇用保険の被保険者として退職する外国人の場合、外国人雇用状況の届出は「雇用保険被保険者資格喪失届」として提出されます。この届出には、外国人労働者の在留カード番号が記載されている必要があります。退職後、この届出書を提出する期限は10日以内ですので、確実に対応するようにしましょう。
退職者が雇用保険の被保険者でない場合
雇用保険の被保険者とならない外国人が退職する場合は、外国人雇用状況の届出書(様式第3号)の提出が必要です。この届出書はハローワークで配布されているほか、厚生労働省のウェブサイトからもダウンロードできます。提出期限は、退職月の翌月の末日までとされています。
出典:)「外国人雇用状況の届出について」厚生労働省
雇用保険被保険者資格喪失届と必要書類を作成・提出
雇用保険を脱退するときには、雇用保険被保険者資格喪失届の提出が必要です。
提出先は、管轄のハローワークです。期限は、離職の翌日から起算して10日以内なので、間に合うようにスケジュールを管理しましょう。
雇用保険被保険者資格喪失届の記載内容は日本人と同様の、個人番号や離職等年月日、氏名生年月日などの他に外国人特有の記載する内容があります。
それは、以下の5つです。
・被保険者氏名(ローマ字)
・在留期間
・派遣・請負就労区分
・国籍・地域
・在留資格
雇用保険被保険者資格喪失届は、電子申請が可能です 。
「離職票交付あり」、「離職票交付なし」、「期間等証明票交付あり」の、3種類の手続きができます。「e-Gov電子政府の総合窓口」のページに行き、「従業員が退職した場合」のページを選んでください。
様式が新しくなっているので、これから手続きをする場合は「令和2年3月以降手続き」と書いてある手続きを選びます。
電子申請をするためには、電子証明書が必要です。電子証明書を持っていない場合は、申請書様式をe-Govのホームページからダウンロード、プリントアウトして記入し、管轄のハローワークに提出することも可能です。
在留カード番号記載様式の提出
2020年3月から在留カード番号の届出が必要になりました。
雇用保険被保険者資格喪失届とは別に、在留カード番号記載様式が用意されているので、そちらも提出してください。
記載事項は以下の通りです。
・事業所番号
・事業所名
・在留カード番号記載欄(個人別票の枝番号、被保険者番号、氏名、在留カード番号記載欄)
届出期限は、雇用保険被保険者資格喪失届の提出期限と同様で、離職の翌日から起算して10日以内です。
退職した時に本人が行う手続き
これまでは、企業側が行うべき手続きを説明してきましたが、ここでは退職した本人が行う手続きを説明します。
所属(契約)機関に関する届出
外国人労働者は、退職や転職などの際に、受け入れ機関(企業や学校など)の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署へ所属機関の変更に関する届出を提出しなければなりません。この手続きは、離職などの事由が発生した日から14日以内に行わなければなりません。提出事項には、退職日と退職した機関の名称と所在地が含まれます。所属機関に関する届出はオンラインでも提出可能です。
在留資格の更新・変更
次に、在留資格の更新または変更の手続きが必要です。在留資格の有効期限が短くなっている場合、転職予定がある場合、または転職後の職種が現在の在留資格で許可されていない場合、在留資格の更新または変更手続きが必要です。
通常、外国人本人がこの手続きを行いますが、企業が代理人として手続きを行うことも可能です。特定技能や特定活動など、一部の在留資格の場合、職種の変更にかかわらず在留資格変更許可申請が必要な場合があります。
失業給付金(失業手当)の申請
最後に、失業給付金(失業手当)の申請が必要な場合があります。失業給付金の支給対象となる外国人労働者は、雇用保険に加入している必要があります。加入期間が12か月以上の場合、ハローワークで失業給付金の申請が可能です。加入期間が12か月未満の場合は失業給付金の申請が認められません。
外国人が退職した後帰国する時にすること
外国人が退職後、帰国する場合、彼らが支払った年金に関する質問が頻繁に寄せられます。厚生年金に加入している外国人労働者が、加入期間が6か月以上ある場合、退職後、日本を出国した後に脱退一時金の請求ができるかもしれません。
脱退一時金は、厚生年金保険から支給される一時金で、外国人が日本を出国した後、厚生年金保険の加入期間に応じて支払われます。この手続きについて説明することができると、外国人からの年金に関する問い合わせに対処できます。
出典:)「脱退一時金の制度 」日本年金機構
では実際に、外国人労働者が退職後、母国に帰国する際の手続きについて説明します。
1.脱退一時金の手続き
2.住民税の支払い
3.銀行口座の解約
4.住民票の転出届
5.その他の手続き
脱退一時金の手続き
外国人労働者は、国民年金や厚生年金の脱退一時金を請求できます。この一時金は、老齢年金の受給資格に満たない状態で帰国する場合に、納めた年金保険料の一部を返金される制度です。ただし、再来日して年金受給資格を持つ可能性がある場合は、脱退一時金の請求は不要です。しかし、将来的に再来日する予定がない場合は、脱退一時金の請求が適切です。
住民税の支払い
外国人労働者は、年度の途中で帰国しても、1月1日時点での住民登録があれば、その年の住民税を支払う義務があります。退職後の住民税の支払いは、一括して給与や退職金から徴収されることがあります。支払いができない場合は、納税管理人を選任し、支払いを行う必要があります。
銀行口座の解約
銀行口座の解約も忘れずに行いましょう。口座の残高が0円でも、解約手続きが必要です。解約せずに放置すると、預金が休眠預金となる可能性があります。
住民票の転出届
帰国する場合は、居住地の市区町村役場に住民票の転出届を提出する必要があります。転出手続きを怠ると、帰国後も税金や年金の請求が届く可能性があるため、注意が必要です。
その他の手続き
賃貸契約の解約や、公共料金の停止、携帯電話やインターネットの解約など、生活に関わるさまざまな手続きも行う必要があります。これらの手続きは、帰国の予定が決まったら早めに行うようにしましょう。
企業が気を付けること
外国人労働者が退職の際に企業が気を付けることは以下の3つです。
・届出の期限を厳守する
・退職後の外国人の動きを把握する
・就労ビザの手続きを正確に行う
・本人が行う手続きの存在を知らせる
それぞれ詳しく解説していきます。
届出の期限を厳守する
外国人が退職する際、企業は提出期限を守ることが非常に重要です。
特に特別永住者以外の外国人が退職する場合、企業は「雇用保険被保険者資格喪失届」をハローワークに必ず提出しなければなりません。
同様に、入管法によれば、企業は雇用している外国人が退職する際に、入局管理局に報告する責任があります。ただし、資格喪失届をハローワークに提出することで、入館管理局への報告は不要です。
この報告は、外国人が退職した翌日から10日以内に行わなければならず、期限を逃すと罰金の可能性もあるため、慎重に対処する必要があります。外国人の雇用関連の手続きには、期限の厳守が求められることを覚えておきましょう。
退職後の外国人の動きを把握する
外国人労働者が退職する際、企業は特に注意が必要です。
その理由は、退職後の外国人の状況を把握しておかなければならないからです。外国人が新たな職に就く場合や職種が変わる場合、在留資格の変更手続きが必要です。
しかし、同じ職業にとどまる場合や職場を変えないまま滞在を続ける場合、外国人が資格更新やビザ変更の手続きを怠ることがあるかもしれません。
もし在留資格に関する問題が生じた場合、以前の雇用主に対して入国管理局からの問い合わせがある可能性も考えられます。そのため、退職後も外国人の状況を確認し続けることが重要です。
就労ビザの手続きを正確に行う
外国人が退職する際、企業は就労ビザの手続きを正確に行うことに大きな注意を払う必要があります。
就労ビザは、日本の企業で働くための在留資格を証明するものであり、外国人が日本に滞在し続けるためには仕事に従事している必要があります。
しかし、退職後、就労ビザが即座に無効になるわけではないため、外国人労働者に対して明確な説明が欠かせません。
外国人が退職後にとる選択に応じて、ビザの有効性が維持されるか、あるいは変更手続きが必要かが変わってきます。
したがって、外国人に対して事前に適切なビザの手続きが必要かどうかを確認し、その後のステップを指導することが重要です。外国人のビザ状況を適切に管理し、法的な問題を回避するために企業は細心の注意を払うべきです。
本人が行う手続きの存在を知らせる
先ほども述べた通り外国人が退職する際には、本人も手続きを行う必要があります。
例えば、退職後は入国管理局に「契約(所属)機関に関する届出」を提出する義務が法律で定められています。この手続きは、退職後14日以内に行わなければなりません。もし忘れると、在留資格の更新が滞る可能性があります。
しかし、多くの外国人は日本の法律について詳しく知らないため、このような届出や手続きの存在を知らないことがあります
。
退職時に、手続きについての周知やアドバイスを提供することで、彼らが法的義務を果たせるようサポートすることが重要です。
■エンジニアの在留資格についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
エンジニアビザとは?取得手順や注意、必要書類について詳しく解説!
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まとめ
いかがでしたでしょうか。外国人が退職する際の手続きは日本人の場合より煩雑な手続きが必要になってきます。もちろん、自社で手続きを行うことも可能ですが外部の専門家を頼るのも1つの方法かもしれません。
■外国人労働者の定着についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
外国人社員を定着させるには?定着しない理由や定着させる方法を解説