外国人労働者を採用しようとした場合、就労ビザや在留資格などさまざまな制度について触れる機会があるでしょう。しかし、どのような種類のものがあるのか、何が違うのか明確に区別はついていますか。本記事では、外国人労働者の種類について解説します。
外国人労働者の現状と数推移
外国人労働者の総数は、2,048,675 人で、前年比 225,950 人増加し、届出が義務化された平成19年以降、過去最高を更新し、対前年増加率は 5.5 %と、前年の 0.2 %から 5.3 ポイント増加しています。
外国人を雇用する事業所数は 318,775 所で、前年比 19,985 所増加し、届出義務化以降、過去最高を更新し、対前年増加率は 6.7 %と、前年の 4.8 %から 1.9 ポイントの上昇があります。
【参考文献】「在留資格別外国人労働者数の推移 」厚生労働省
産業別で見てみると、エンジニア関係である情報通信業に就く外国人労働者の数は75,954人で対前年増加率は7.6%となっています。数そのものは医療福祉業の次に少ないですが、増加率は2番目に高い割合になっており外国人エンジニア人材が求められつつあるというのは明確な事実です。(令和3年)
■外国人労働者を採用する際に気を付けたい文化や風習の違いについてはこちらの記事で解説しています。
外国人労働者の文化と風習の違いから生じる課題とその対処法とは?
外国人労働者を受け入れる企業のメリットは?
ここまでで、外国人労働者の種類や制度について説明しましたが、企業が彼らを受け入れるメリットはどのようなものでしょうか。
労働環境の変化と改善
外国人労働者の受け入れ制度を導入することで、国籍にかかわらず全ての従業員が働きやすい環境を整える必要があります。多言語の業務マニュアルや勤怠管理の方法を導入することで、外国人だけでなく日本人の働きやすさも上げることができます。
人手不足の解消
日本国内で求人を出しても適切な人材が集まらない場合、外国人労働者を採用することで人手不足を解消できます。外国人は企業の立地や知名度にこだわりにくく、中小企業も有能な人材を確保できる可能性が高まります。
海外進出への第一歩
海外進出を目指す企業にとって、外国人労働者を雇用することは大きなメリットと言えます。外国人は多言語を話せる場合が多く、海外展開において言語能力が不可欠です。また、彼らは文化や風習にも詳しいため、海外での事業展開におけるサポート役として重要な役割を果たすことが期待できます。
優秀人材の確保
日本の少子高齢化に伴い、優秀な人材の確保が難しくなっています。競争が激化する中、外国人労働者を積極的に採用することで、優秀な人材の発掘の機会が増えます。特に、外国人労働者には多様なスキルと経験があり、企業に新たな価値をもたらす可能性があります。
外国人労働者を受け入れる際のデメリットは?
次に、企業が外国人労働者を受け入れる際のデメリットについてです。
文化の違いによるコミュニケーション障害
異なる文化や習慣を理解しないと、予期せぬ問題が発生することがあります。価値観や善悪の基準の違いから、無意識のうちに相手を不快にさせたり、場合によっては法律に違反する可能性もあります。円滑なコミュニケーションをするためには、お互いが異文化を理解し受け入れることが重要です。
受け入れまでに時間がかかる
外国人労働者はビザの発行に時間を要するため、採用してから受け入れるまでに時間がかかります。特に、海外から人材を招聘する際や、技能実習生や留学生を採用する際には、ビザの発行や必要書類に関する情報を事前に把握しましょう。
外国人労働者の受け入れや技能実習生、留学生などの雇用に際しては、就労ビザの申請が必要で、事前に適切な手続きを踏むことが重要です。
外国人労働者の種類とは
結論として、外国人労働者は以下の4種類に分けることができます。
・技能実習生
・特定技能外国人
・高度外国人材
・留学生アルバイト
それぞれの特徴を見ていきましょう。
技能実習生
技能実習生は、特定の産業で技能実習の在留資格を持つ外国人実習生のことを指します。技能実習は、外国からの実習生を受け入れ、彼らが実務を通じて技術と知識を習得することを目的としたプログラムであり、実習終了後、実習生は母国に帰国し、日本で得たスキルや知識を活かすことが期待されます。また、希望する実習生には、特定技能在留資格への切り替えの手続きができます。
特定技能外国人
特定技能外国人は、「特定技能」在留資格を持つ外国人労働者のことを指します。特定技能は、特定の産業分野(12業種)での外国人労働者受け入れを目的とした在留資格であり、日本語試験と業種ごとの技能試験の合格が必要です。特定技能外国人は、高水準の日本語力と実務スキルを備えており、即戦力として期待できます。
高度外国人材
高度外国人材とは、高度な専門性と技術力を備え、企業の核として活躍する期待が寄せられる外国人労働者です。日本貿易振興機構によると以下のように定義されています。
1,在留資格「高度専門職」と「専門的・技術的分野」に該当するもののうち、原則、「研究」、「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」、「法律・会計業務」に該当するもの
2,採用された場合、企業において、研究者やエンジニア等の専門職、海外進出等を担当する営業職、法務・会計等の専門職、経営に関わる役員や管理職等に従事するもの
3,日本国内または海外の大学・大学院卒業同等程度の最終学歴を有している
【参考文献】「高度外国人材とは 」JETRO 日本貿易振興機構(ジェトロ)
留学生アルバイト
留学生アルバイトは、留学資格を持つ外国人で、通常は就労が許可されていない在留資格を持つ人々です。留学生アルバイトを行うには、事前に地方出入国在留管理局への許可申請が必要で、許可が下りた場合に限り、週に最大28時間までアルバイトが認められます。
外国人労働者の在留資格とは?
日本国籍を持たない人が日本で就労する場合、さまざまな障害があります。しかし、日本で働いている外国人も多く見かけるでしょう。外国人に与える就労を認めた資格を在留資格といいます。入管法上の法的な資格です。在留資格には就労関係と身分関係のものがあり、全部で33種類あります。外国人労働者の種類分けをするには様々な観点がありますが、法的には在留資格とビザの2つの観点から説明することができます。
就労ビザと在留資格の違い
ビザとは、日本語で査証ともいい、渡航先の国に事前に申請し、審査を経て発行される「入国許可証」ともいえるものです。
在留資格とは、外国人が日本に在留する間、一定の活動を行うことができること、または、一定の身分や地位を有する者としての活動を行うことができることを示す、「入管法上の法的な資格」のことです。
ビザ 入国許可証
在留資格 資格
パスポート 身分証明書
在留資格上の外国人労働者の種類
外国人が就職したり働くために日本で入国・在留する場合、これに関する基本的事項は「出入国管理及び難民認定法」に定められています。
職種、業種を問わず就労可能な在留資格
・永住者
・日本人の配偶者等
・永住者の配偶者等
・定住者
これらの在留資格を有する方は、日本国内での活動に制限は全くないため、どのような職業でも就労することができ、また、他の職業に転職することも自由です。
一定の範囲内の職種、業種、勤務内容に限って就労が可能な在留資格
【参考文献】「専門的・技術的分野の外国人材受入れについて 」出入国在留管理庁
これらが職業相談や職業紹介を受ける事ができる在留資格です。なお、これらの在留資格であっても、他の在留資格に属する収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行う場合は、資格外活動の許可又は在留資格変更の許可が必要です。
技能実習における実習生受け入れの内訳
外国人技能実習制度では、合計85の職種に関わる158の作業工程で実習生を受け入れています。このプログラムは、以下のように大まかに分類できます。
・農業関係(2職種6作業)
・漁業関係(2職種10作業)
・建設関係(22職種33作業)
・食品製造関係(11職種18作業)
・繊維・衣服関係(13職種22作業)
・機械・金属関係(15職種29作業)
・その他(20職種37作業)
【参考文献】「外国人技能実習制度について 」厚生労働省
特定技能における在留資格の12種類
特定技能資格は日本政府が厳密に指定する12の産業分野でのみ発行されています。特定技能資格を取得するためには、日本語試験と特定の業種に関連した技術試験の両方に合格する必要があります。このプログラムでは高度な専門知識は必要とされず、一定の言語スキルと技術スキルを備えた個人が受け入れられる点が特徴です。
ただし、特定技能の在留資格は業種に依存しており、特定の業種に関連する仕事以外での就労は認められていません。特定技能の在留資格が適用される12つの業種は以下の通りです。
・農業
・漁業
・造船舶用工業
・自動車整備業
・航空業
・宿泊業
・介護
・ビルクリーニング
・建設業
・外食業
・飲食料品製造業
・素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
日本で就労できない在留資格
一方で、これらの在留資格は許可がなければ就労できません。
・文化活動
・留学
・家族滞在
これらの在留資格を有する人は、日本国内で収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことは認められませんが、資格外活動許可については「留学」「家族滞在」の在留資格を有している人が収入を伴う活動を行おうとする場合は就労先を特定せず、包括的に資格外活動許可を申請することができます。
例えば留学生のアルバイトについては、留学生は1週28時間以内であり、本来の活動である勉学活動を阻害しない範囲であれば許可されます。
■エンジニアの就労ビザについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
エンジニアビザとは?取得手順や注意、必要書類について詳しく解説!
ビザ(査証)上の外国人労働者の種類
就労ビザ以外のビザも含めて日本のビザは8種類あります。先ほども述べたように、ビザとは日本語で査証ともいいます。
・外交査証
・公用査証
・就業査証
・一般査証
・短期滞在査証
・通過査証
・特定査証
・医療滞在査証
就労に関係するビザ
外交査証、公用査証、就業査証、一般査証(技能実習)が一般的に就労に関係するビザです。いわゆる「就労ビザ」というものは就業査証のことを指します。外交査証、公用査証はその名の通り外交、公用に用いられるものです。一般査証は留学や研修も含まれますが、技能実習も一般査証にあたるため、就労に関係するといえるでしょう。
短期滞在査証は、短期的な旅行などについてで、通過査証は乗り継ぎの際に日本を経由する場合のビザ、特定査証は日本人や永住者の配偶者や定住者に発行されるビザ、医療滞在査証は日本において治療等を受けることを目的として訪日する外国人患者等(人間ドックの受診者等を含む)及び同伴者に対し発給されるビザのことをいいます。
外国人労働者のビザと在留資格の種類表
査証区分 | 在留資格 |
外交 | 外交 |
公用 | 公用 |
就業査証 | 教授 芸術 宗教 報道 高度専門職1号 高度専門職2号 経営・管理 法律・会計業務 医療 研究 教育 技術・人文知識・国際業務 企業内転勤 興行 技能 特定活動 特定技能 |
一般査証 | 技能実習 文化活動 留学 研修 家族滞在 |
短期滞在査証 | 短期滞在 |
通過査証 | |
特定査証 | 日本人の配偶者 |
永住者の配偶者 | |
定住者 | |
医療滞在査証 | 特定活動 |
【参考文献】査証(ビザ/VISA)の種類 東京入管・永住、帰化申請サポート室
ビザ(査証)と在留資格は2つとも重要なものですが、重なる部分もありわかりにくくなっています。2つの関係を確認したい場合はぜひ参考にしてください。
【比較】企業が使える外国人労働者受け入れ制度
現在、日本の企業が外国人労働者を受け入れるための3つの制度が存在します。それぞれの制度には異なる目的や受け入れできる業界、必要な要件が存在します。
技能実習制度
技能実習制度は、中国、ベトナム、フィリピン、ネパールなどの外国人に、日本の技能や技術を教え、彼らが自国の発展に貢献することを目的とした受け入れ制度です。日本の高い技術を現場での職務経験を通じて習得してもらい、帰国後に培った技術を広めてもらう、という国際貢献が主な目的となっています。そのため受け入れ人数に制限があります。この制度は国際協力の一環であり、主に人材育成を重視しています。つまり、技能実習生を単なる労働力として使用することはできません。
また、適切な賃金支払いが必要であり、技能実習生を安価な労働力として扱うことは推奨されません。外国人雇用や海外進出を考える企業には、技能実習制度が適しています。技能実習は、あくまでも「実習」であり、就労している訳ではないため、転職と言う概念自体が存在せず、職場を変えることはできません。
特定技能制度
特定技能制度は、上で挙げた12分野で慢性的な人材不足がある場合に、外国人労働者に幅広い業務を許可する制度です。この制度の目的は人手不足の解消であり、これらの分野に属する企業は特定技能人材として外国人を雇用できます。
そのため受け入れ人数に制限があります。特定技能は人手不足の解消が目的であるため、専門的な知識を必要としない単純労働を行うこともできます。しかし技能実習生は専門性の高い作業を学びに日本に来ているため、そうした単純労働を行うことはできません。
特定技能においても、単純労働のみに従事させる訳ではなく、一定の専門性・技術を有した外国人人材を登用すると言う点に注意しておきましょう。一定の条件を満たす外国人には在留資格「特定技能」が付与され、日本での就労が長期間可能です。技能実習生から特定技能人材への移行も可能であり、企業が技能実習生を本格的に活用したい場合にも適しています。
特定技能には1号と2号の2つのカテゴリがあり、一部の分野では熟練した外国人を無期限に雇用することが可能です。同じ職種であれば、転職も可能です。また、「特定技能評価試験」と「日本語能力試験」の合格が条件です。
特定技能1号
特定産業分野で一定の知識や経験を持つ外国人に与えられ、最長5年の在留期間が許可されます。日本語能力や技能水準の試験に合格する必要があります。
特定技能2号
建設と造船・舶用工業の分野でのみ雇用が認められており、熟練した技能を持つ外国人に与えられます。定期的な更新手続きが必要ですが、在留期間の上限がないため、実質的に無期限に雇用できる外国人です。母国にいる配偶者並びに子供に限り、家族滞在が認められています。
高度人材ポイント制度
高度人材ポイント制度は、優秀な外国人労働者を日本に呼び、イノベーションを促進するために設立されました。この制度では「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の分野に該当する外国人労働者を対象としています。外国人の学歴、年収、経験年数などに応じてポイントが与えられ、合計が70点以上で在留資格「高度専門職」が授与されます。
高度人材に認定される外国人には永住許可の条件が緩和されたり、複合的な活動が許可されたりなど、さまざまな優遇措置があります。優秀な人材を確保したい企業には、高度人材ポイント制度を検討する価値があります。
外国人労働者を受け入れる企業のメリットは?
ここまでで、外国人労働者の種類や制度について説明しましたが、企業が彼らを受け入れるメリットはどのようなものでしょうか。
労働環境の変化と改善
外国人労働者の受け入れ制度を導入することで、国籍にかかわらず全ての従業員が働きやすい環境を整える必要があります。多言語の業務マニュアルや勤怠管理の方法を導入することで、外国人だけでなく日本人の働きやすさも上げることができます。
人手不足の解消
日本国内で求人を出しても適切な人材が集まらない場合、外国人労働者を採用することで人手不足を解消できます。外国人は企業の立地や知名度にこだわりにくく、中小企業も有能な人材を確保できる可能性が高まります。
海外進出への第一歩
海外進出を目指す企業にとって、外国人労働者を雇用することは大きなメリットと言えます。外国人は多言語を話せる場合が多く、海外展開において言語能力が不可欠です。また、彼らは文化や風習にも詳しいため、海外での事業展開におけるサポート役として重要な役割を果たすことが期待できます。
優秀人材の確保
日本の少子高齢化に伴い、優秀な人材の確保が難しくなっています。競争が激化する中、外国人労働者を積極的に採用することで、優秀な人材の発掘の機会が増えます。特に、外国人労働者には多様なスキルと経験があり、企業に新たな価値をもたらす可能性があります。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。日本で働いている外国人労働者は数多くいますが、それぞれが持っている在留資格やビザは異なり、それによって種類分けすることができます。本記事が、外国人採用を考えている方の一助になれば幸いです。