外国人労働者の方にとって、銀行口座があると日本での生活が非常に便利になります。また、銀行口座の開設は雇用予定企業の方にとってもメリットがあります。
そもそも日本で外国人の銀行口座を開設することはできるのか、どのような書類が必要なのか、雇用企業のサポートは必要なのか等わからない方も多いでしょう。
そこで本記事では、
・外国人の銀行口座開設における条件
・口座開設のメリット
・口座開設に必要な準備
・口座開設の流れ
・雇用企業の行うべきサポート
・おすすめ銀行口座
について詳しく解説していきます。
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外国人の銀行口座の開設は可能なのか
結論から述べると、外国人が銀行口座を開設することは可能です。しかし、外国人の方の銀行口座開設には、以下の2つの条件が必要不可欠となります。
・仕事や留学を目的に日本に6か月以上滞在している
・現住所の証明が可能
仕事や留学を目的に日本に6か月以上滞在している
銀行は、滞在期間が一定以上(通常は6か月以上)で仕事や留学を目的としていることを確認する場合が多いです。また、外国人登録カードや滞在資格の証明書などの必要な書類の提出を銀行で求められます。
具体的な要件は銀行によって異なるので、口座を開設したい銀行に直接問い合わせて詳細情報を入手したほうが正確で手早いです。
現住所の証明が可能
日本での現住所の確認が取れる物の提出を求められます。その中でも住民票は必須になってきますので滞在期間が6ヶ月を超え、口座を開設する際には必ず、住民票を取得してください。
また、現住所を確認するための書類で公共料金(電気・ガス・水道・固定電話など)の支払い証明書を提示できない場合は、口座開設を断られてしまうことがあります。
外国人が銀行口座を開設できない多くの理由
一方で、前述した条件を満たしていたとしても銀行口座を開設できない場合もあります。この理由として信用情報や金融履歴がないことが挙げられます。
信用情報
金融情報
それぞれ詳しく解説していきます。
信用情報
信用情報とはクレジットやローンの契約や申し込みに関する情報のことで、客観的な取引事実を登録した個人の情報です。この信用情報は、クレジット会社などが顧客の信用を判断するための参考資料として利用されます。
金融履歴
その人がこれまでに行った金融取引の履歴のことを指します。この金融履歴を参考に、もし支払いの延滞や未納があった場合は断れる可能性があります。
特に多くの外国人の方はこれらの情報がないため、信用に足りないとされ口座の開設ができない場合があります。なるべく口座が開設しやすい銀行を用いるようにしましょう。
■在留資格について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください!
外国人労働者の種類とは?在留資格やビザの分類、技能実習生との違いを解説
外国人の銀行口座を開設するメリット
外国人労働者の方が銀行口座を開設可能であることや、口座開設に必要な条件についてお分かりいただけたと思います。
では、外国人労働者の方が銀行口座を開設することにメリットはあるのでしょうか。
・給料の支払い・受け取りができる
・引き落としで使える
・海外送金できる
上記の3つの項目に分けて詳しく解説していきます。
給料の支払い・受け取りができる
給与の支払い・受け取りができるという点です。手渡しで給与を渡す企業もなくはないですが、現在はほとんど見かけません。企業と外国人どちらも利便性が格段に上がります。
また、給与は金額が大きく、安全面と正確性の観点からも非常に重要です。
労働者全体で給与の渡し方を統一することはコストの削減にもつながるため、企業側にとって大きなメリットでしょう。
引き落としで使える
これは、外国人の方にとってのメリットです。引き落としの利用ができなくてもコンビニ払いなどの方法があるから、と口座開設をやめようとしていませんか。
しかし、毎月の支払がある電気やガスの料金で毎回コンビニ払いをするのはかなりの手間になります。また、引き落としの場合はコンビニの支払手数料がかからなくなるためメリットが大きいです。
海外送金できる
仕送りや借金の返済のために海外送金を行う点においても、外国人の方にとっては大きなメリットになるでしょう。海外送金は銀行か、資金移動業者に依頼することになります。資金移動業者は一部の国にしか対応していないところも多いですが、銀行はほとんどの国に対応しています。
特に祖国に住む家族に仕送りを行う労働者の方が多いです。そのため、中には口座を持たない外国人労働者向けに、海外送金を請け負う違法業者も存在しています。これは犯罪行為に該当します。安全性の面からも、なるべく銀行を使うようにしましょう。
外国人の銀行口座の開設に必要なもの
銀行口座の開設に必要なものは下記の5つです。
・本人確認できる書類
・住民票
・社員証または学生証
・印鑑
・電話番号
銀行によって異なるため一例ですが、解説していきます。
本人確認のできる書類
まず、これは国籍にかかわらず口座開設の際に必要になります。本人確認のできる書類とは、「氏名」「現住所」「生年月日」が確認できる書類のことです。
外国人の方にとっては、パスポート、在留資格がこれに該当します。なかには、在留資格の提示が必須の銀行もあるため用意しておきましょう。
住民票
銀行口座を取得するためには原則的に住民票が必要になっています。
パスポートと在留カードを役所に持ち込むことで取得することができるため、あらかじめ住民票を取得した後に銀行口座開設を行ってください。
社員証や学生証
外国人の方の場合は、社員証や学生証が求められる可能性があります。発行するまでに時間がかかるなどの問題で証明書がない場合は外国人の受け入れに関わる人が口座開設に同行しましょう。
印鑑
日本での銀行口座開設には多くの場合印鑑が必要とされます。銀行印は、シャチハタ・ゴム印は印面が劣化するため登録できないというルールはあるものの、厳格な規定は存在しません。しかし、外国人の方の名前の場合購入が難しく、印鑑の作成が必要になるかもしれません。前もって確認しておきましょう。
なかには、印鑑ではなくサインで開設できる銀行もあります。
電話番号
銀行口座を開設するにあたって連絡や確認を行う、セキュリティ確認や認証、口座関連のお知らせを行うために電話番号が求められます。
固定回線ではなく、携帯電話の番号で問題ないので事前に契約を行ってから口座開設を行ってください。
外国人労働者におすすめの携帯契約は?雇用企業にできるサポートまで徹底解説!
外国人の銀行口座の開設方法
外国人の方の銀行口座の開設方法を解説します。当たり前のこともありますが、一から確認しましょう。
下調べ
まずは、どこの銀行で口座を開設するか決めましょう。外国人労働者の方は、勤め先から指定されているかもしれません。指定されていない場合、雇い主の方の場合などはなるべく外国人の方も開設しやすい銀行を選びましょう。
選んだら、必要書類や持ち物を調べ確認しておきます。例えば印鑑は外国人の方は持っていないことが多いため注意しましょう。また、不足している持ち物があれば早めに取得することで口座開設の際にスムーズに進みます。
申し込み手続き
店舗の方の指示に指示に従い、申し込み手続きをします。個人情報の設定やパスワードの設定など重要な手続きがありますので外国人の方にとって、言語の壁があるためなるべくサポートしましょう。
ちなみに、通帳はアルファベット、キャッシュカードはカタカナ(キャッシュカードは日本人でもカタカナ表記になります)になります。
カードの受け取り
申請から1,2週間で問題なければ口座が開設されます。その後1週間から10日でカードが郵送されるので、直接カードを受け取ります。受取の際にも身分証が必要なので用意しておいてください。
キャッシュカードの紛失にはくれぐれも気をつけましょう。また、もし紛失した場合は速やかに金融機関に連絡を入れるようにしましょう。
■他にも外国人を採用する際に必要な手続きは多くあります。ぜひ下記の記事を参考にしてください。
外国人の銀行口座開設において雇用企業にできるサポート
外国人の銀行口座開設にサポートが必要なのでしょうか。実はこのことについては、金融庁も触れているほど重要なことになります。
ここではなぜ口座開設にサポートが必要なのか、また雇用企業はどんなサポートができるのか、について詳しく解説していきます。
・口座開設時の通訳
・日本の金融ルールを教える
・帰国時のトラブルを防ぐ
出典:)「外国人の方の預貯金口座・送金利用について」金融庁
口座開設時の通訳
先ほど解説した、口座開設に必要な条件を満たしていても言語の壁によりコミュニケーションが難しいと判断された場合に、口座開設を断られる場合があります。
これは特に外国人労働者の場合、細かい規約も存在するためコミュニケーションが取れない方には、銀行側としても口座を渡すことができないのです。
口座開設には通訳によるサポートを行ったほうが良いでしょう。
日本の金融ルールを教える
免許を持たずに銀行業を行う地下銀行や、法外な金利で金貸しをする闇金などが、日本のルールに詳しくない外国人労働者を狙っていることがあります。こういった犯罪に巻き込まれてしまうと、外国人労働者本人が被害を受けるだけでなく、雇用企業からしても貴重な労働力を失ってしまうことにつながります。
そのため、日本の金融ルールについて詳しく教えるのは企業にできるサポートと言えるでしょう。
帰国時のトラブルを防ぐ
帰国時に小遣い稼ぎ目的で、口座を売却する外国人労働者の方が後をたちません。買い取られた口座は、振り込め詐欺等の犯罪収益の受渡しや国際テロに使われることもあり、重大犯罪につながることがあります。
そういった重大犯罪を未然に防ぐために、帰国時にも企業側が意識してサポートを行っていくことが大切です。
■外国人のトラブルに関しては下記の記事で詳しく解説しています。
外国人の口座開設におすすめの銀行
銀行によっては、口座開設の審査が厳しいところもあります。そのため、なるべく外国人の方も開設しやすい銀行を選びましょう。おすすめの銀行を紹介します。
外国人の貯蓄金口座開設ができる金融機関
そもそも、外国人の貯蓄金口座開設ができる金融機関は次のとおりです。
・銀行
・信用金庫
・信用組合
・JAバンク
・JFマリンバンク
・労働金庫
ゆうちょ銀行
ゆうちょ銀行は比較的外国人の銀行口座開設がしやすいといえます。普通口座に必要な在留期間は3か月以上です。全国に店舗・ATMがあり、利用しやすいのが魅力です。
また、口座開設をしたい外国人向けの案内と、インターネット上で事前に申込書を作成できるサービスを英語や中国語を含む14言語で提供しています。
必要なもの
・在留カード(在留満了日まで3か月以上あるもの。更新予定がある場合は、更新を終えてから口座開設しましょう。)
・学生証(在留資格が「留学」の方)
・社員証(在留資格が「技能実習」の方)
三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行も大きな銀行の1つで、外国人の方も口座開設がしやすいです。日本国籍以外の方は、窓口での取引確認が必要なため、「スマート口座開設」を利用できない点に注意が必要です。
必要なもの
・在留カード、または特別永住者証明書(該当する方)
・印鑑(届け印)
SBI新生銀行
SBI新生銀行も口座開設がしやすくなっています。一方で日本に入国後6ヵ月未満で日本国内で勤務していない方や在留資格が外交・公用・短期滞在の方は口座を開設できないため注意が必要です。
必要なもの
・在留カード
・特別永住者証明書
・運転免許証
外国人が銀行口座を開設した後にサポートすべきこと4つ
外国人の方が銀行口座開設をした後も気を付けて雇用企業がサポートするべきことがあります。
先ほど解説したものと少し重複してしまいますが
・海外送金などの使い方
・在留資格の変更
・帰国時の解約
の4つの注意点について詳しく解説していきます。
ATMの利用
外国人にとって日本のATMは非常に複雑なものとなっています。その理由として銀行にあるのはもちろんのことコンビニや駅などにもあり、ATMの種類も手数料も様々だということです。
この上でサポートすることは
・基本的なATMの操作方法
・ATMの手数料の違い
・近所にあるATMの場所
を教えてあげることが必要です。
この上で、基本的に利用するATMの場所を制限してあげることで操作方法がわからなくなることや手数料を過剰に取られることを防ぐ工夫も大事になってきます。
海外送金などの使い方
祖国にいる親族へ送金するためにも海外送金の方法を伝えることは非常に大事です。使用する言語が違うと非常に複雑な操作になりますので、海外送金の手数料についてや送金までに必要な日数などを丁寧に教えてあげましょう。
在留資格の変更
現住所の変更や在留資格の変更の際には、すぐに銀行に連絡することが必要です。最悪の場合、銀行口座が使えなくなってしまうので連絡を忘れないように確認しましょう。
また、その他に退職や退学などで身分が変わった場合にも金融機関への連絡が必要となります。
■外国人の在留資格に関しては下記の記事で詳しく解説しています。
帰国の際の解約
先述の通り、帰国する外国人の方が、犯罪行為であるとの認識が薄いまま、小遣い稼ぎ等を目的とし、預貯金口座(預金通帳・キャッシュカード等)を売却する事例が多発しています。
売却された預貯金口座は、振り込め詐欺等の犯罪収益の受渡しに使用されることがあります。そういった行為に関わると、法令による処罰や、国外退去処分、入国禁止となる場合があります。そのため、外国人の方が、在留期間が終わるなどの理由により帰国することとなった場合は、金融機関の窓口に行き、預貯金口座を解約する必要があります(再入国するなどの予定があり、引き続き預貯金口座を利用することが見込まれる場合は、金融機関に相談する必要があります)。受入れに関わる方は、外国人の方の置かれている状況に応じて対応が必要です。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。本記事では、外国人の方が銀行口座を開設する上で必要な手続きや書類についてまとめました。日本国籍の方とは違い、口座開設のハードルが上がりますが、条件を満たせば不可能ではありません。
銀行口座は、外国人労働者の方にとっては必要不可欠ともいえるものです。ぜひ本記事を参考に口座の開設に挑戦してみてください。