現在日本では外国人労働者の数が増えており、労働人口不足の歯止めとなっています。しかし、外国人を採用したいとなってもそれに関連する法律周りはわからないことが多いでしょう。
そこで、
・外国人労働者を採用するにあたって注意すべき点
・入管法で定められる在留資格
・労働基準法が定める労働の基準
・雇用対策法が決める雇用主の義務
について企業目線で解説していきます。
企業が守らなければならない外国人雇用の法律について
企業が外国人労働者を雇用する際には、適切な手続きを踏む必要があります。特に重要なのは在留資格と在留期間の確認です。これらを怠ると、不法就労や不法滞在となり、雇用主も罰せられる可能性があります。今回は以下の4つの法律を紹介します。
・出入国管理及び難民認定法(入管法)
・労働基準法
・雇用対策法
・最低賃金法
外国人雇用で企業が注意すべき点
外国人労働者を雇用するときに、漏れがあると企業が罰せられることもあるので注意が必要です。
在留資格と在留期間
在留期間は在留資格ごとに定められており、在留カードで確認可能です。在留期間を過ぎて滞在し続けると不法滞在となり、不法就労とみなされます。不法就労外国人を雇用した場合、雇用主は「不法就労助長罪」に問われ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
労働者の日本語能力
日本企業で働くには、日本語能力がもちろん重要です。言語スキルが低いと、他の労働者とのコミュニケーションに問題が生じるだけでなく、業務の進行に支障をきたす可能性があります。そのため、企業は外国人労働者の日本語レベルを確認する必要があります。
日本語能力試験(JLPT)は、日本語レベルを測るための基準として広く用いられています。JLPTはN1からN5までの5段階に分かれており、数字が若いほど日本語レベルが高いことを示します。
一般企業でのビジネスの場では、通常N1かN2レベルの日本語能力が必要とされます。N3は日常会話をある程度理解できるレベルですが、ビジネス環境でのコミュニケーションには不十分な場合があります。N4は身近な話題の文章を読んで理解できるレベルですが、日本人との意思疎通が困難になることが多いです。
外国人労働者の日本語能力について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
出入国管理及び難民認定法(入管法)
出入国管理及び難民認定法(通称「入管法」)は、日本への入国・出国を管理し、難民認定手続きを規定するための法律です。この法律は、日本に来る全ての人々に適用されるものであり、日本人も外国人もその対象に含まれます。入管法の正式名称は「出入国管理及び難民認定法」であり、1951年10月4日にポツダム命令に基づいて公布されました。その後、外務省の命令に基づく法律として扱われるようになり、複数回の改正を経て現在に至ります。
在留資格の分類
入管法では、外国人の活動内容に応じて在留資格が以下のように分類され、就労に関する制約が設けられています。
就労可能な在留資格一覧
1. 就労に関する制約がない在留資格
永住者
日本人の配偶者等
永住者の配偶者等
定住者
2. 在留資格の範囲内で就労が可能な在留資格
外交
公用
教授
芸術
宗教
報道
経営・管理
法律・会計業務
医療
研究
教育
技能
技術・人文知識・国際業務
企業内転勤
興行
技能実習
高度専門職
介護
3. 許可の内容により就労の可否が決まる在留資格
特定活動
4. 就労できない在留資格
文化活動
短期滞在
留学
研修
家族滞在
特例としての資格外活動の許可
原則として、「特定活動」および「文化活動」、「短期滞在」、「留学」、「研修」、「家族滞在」の在留資格では就労が認められていません。しかし、「留学」や「家族滞在」の在留資格を持つ者、ならびに日本の大学を卒業して就職活動を続けるために「特定活動」の在留資格を持つ者については、地方入国管理局長の許可を得ることで、アルバイト等の就労が可能となります。
具体的には、1週につき28時間以内(「留学」の在留資格者は長期休業期間中には1日8時間以内)での就労が認められています。ただし、風俗営業等は除かれます
また、「文化活動」の在留資格を持つ者についても、個別の状況に応じて資格外活動が許可される場合があります。
留学生の採用について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
2023年の変更で何が変わった?
入管法は1900年代に制定されていますが何回かの改正を経ています。直近ですと2023年に改正されています。
変更前の問題点
改正前の入管法にはいくつかの課題がありました。まず、日本から退去すべき外国人の中には、難民認定申請を繰り返すことで退去を回避するケースや、航空機内で暴れて物理的に退去が不可能になるケースが見受けられました。これによって、退去命令が出されても実際に送還するのが難しい状況が増えていました。
また、退去が確定した外国人は送還までの間、収容施設に長期間収容されることが常態化していました。これは、上記のような退去回避行動をとる外国人の存在が大きな要因でした。
さらに、難民保護制度も十分に機能しておらず、一部の外国人に対する保護が不十分でした。これらの課題に対処するために、仮放免制度が利用され、一時的に収容を解除する措置が取られていましたが、逃亡防止手段が不十分であったため、仮放免者の逃亡が頻発していました。
入管法改正の概要と変更点
2023年6月9日に改正入管法が成立しました。この改正によって、いくつかの変更が行われました。
まず、難民認定申請の制限が強化されました。難民認定申請が3回目以降の場合、相当な理由を示さない限り、強制送還が可能となりました。これにより、申請を繰り返して退去を回避する手法が制限されました。
次に、補完的保護対象者の制度が新設されました。これにより、難民には該当しないが紛争などから逃れてきた人々も保護の対象とすることが可能になりました。
また、退去命令を受けたにもかかわらず送還を妨害した場合の刑事罰が新たに設けられました。これにより、退去妨害行為に対する抑止力が強化されました。
さらに、入管施設への収容の要否を3ヶ月ごとに見直す制度が導入されました。これにより、長期収容が常態化することを防ぎ、収容の必要性を定期的に評価することが求められるようになりました。
最後に、収容施設ではなく、支援者や親族など入管が認めた「監理人」のもとで生活できる制度が新設されました。これにより、収容施設に依存せずに、適切な監督下での生活が可能となり、外国人の人権保護と長期収容の解消が図られています。
労働基準法
労働基準法は、労働条件の最低基準を定め、すべての労働者を保護するための法律です。この法律は、正社員、契約社員、アルバイト、パートタイム労働者など、すべての労働者に適用されます。また、外国人労働者についても、国籍に関係なく同様に適用されます。
労働条件の最低基準について
労働基準法には労働条件の最低基準が記されており、守らなかった場合会社がペナルティを追うことがあります。その中で重要なものをピックアップしました。
・労働時間
・賃金と最低賃金
・割増賃金
・有給休暇
・解雇
労働時間
労働時間の上限は1日8時間、1週間で40時間と定められています。労働者には最低週に1日の休日が必要です。休憩時間は、6時間を超える勤務の場合は最低45分、8時間を超える勤務の場合は最低1時間を取る必要があります。
時間外労働(残業)や休日労働を行う場合は、労使間で『36協定』を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。時間外労働の賃金は、通常賃金の25%以上、1ヶ月の時間外労働が60時間を超える場合は50%以上、休日労働には35%以上の割増賃金が支払われます。
賃金と最低賃金
賃金に関しては、労働基準法第24条に基づき、日本人と同等の職務内容であれば、外国人労働者も同額の賃金が支払われます。賃金は通貨で直接労働者に全額を支払う必要があり、毎月1回以上の一定期日に支払うことが求められます。
労働基準法第28条により、労働者には最低賃金が保障されます。外国人労働者も日本人労働者と同様に最低賃金が適用されます。最低賃金には都道府県別と特定・産業別の2種類があり、どちらか高い方が適用されます。最低賃金に違反した場合、雇用契約は無効となり、新たに最低賃金に基づいた契約が必要です。違反した場合は、50万円以下の罰金が科されます。
割増賃金
時間外労働や休日出勤、深夜業務(午後10時~午前5時)には、割増賃金が必要です。具体的には、時間外労働には25%以上、休日出勤には35%以上、深夜業務には25%以上の割増賃金が支払われます。
また、1ヶ月に60時間を超える時間外労働に対しては50%以上の割増賃金が適用されます。これらの規定は労働者の過重労働を防ぐために設けられています。
有給休暇
労働基準法第39条により、6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者には年次有給休暇が与えられます。この有給休暇中の賃金は減額されません。
解雇
労働基準法第20条より、労働者を解雇する場合、原則として30日以上前に通知する必要があります。これができない場合は、解雇予告手当として30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。この規定は、もちろん外国人労働者にも同様に適用されます。
雇用対策法
雇用対策法は、日本の人口構造の変化、特に少子高齢化に対応し、国が必要な施策を講じることで、労働市場の安定と労働者の職業安定を図るために制定された法律です。この法律は、労働力の需給のバランスを保ち、安定した雇用環境を提供することを目的としています。
【事業主の義務】外国人雇用状況の届出
企業が外国人を雇用する際には、その外国人の氏名、在留資格などの情報をハローワークに届け出る義務があります。この義務は、アルバイトやパートタイム、正社員など雇用形態に関係なく適用されます。
この届出の目的は、以下の点にあります。
・外国人労働者の雇用環境を改善するための政府の助言や指導
・離職した外国人への再就職支援
・不法就労の防止
離職時にも届け出が必要
外国人労働者が離職する場合にも、この情報をハローワークに届け出る必要があります。企業がこの手続きを忘れることが多いため、注意が必要です。この制度により、政府は外国人労働者の正確な雇用状況を把握できるようになりました。
届出の手続きはハローワークで
届出はハローワークで行います。雇用保険に加入する場合は「雇用保険被保険者資格取得届」を提出すれば足ります。手続きは簡単で、インターネットでも行えます。
もし企業が届出を怠ったり虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金が科されます(雇用対策法第40条)。
外国人労働者の雇用管理改善に関する指針
雇用対策法第8条では、企業に対し、外国人労働者がその能力を最大限に発揮できるよう、職業適応を支援する措置や雇用管理の改善、離職時の再就職支援などを行う努力義務を課しています。
さらに、雇用対策法第9条に基づき、厚生労働大臣が企業に適切な対応を促すための指針を定めています。この指針は「外国人労働者の雇用管理の改善等に関する事業主が適切に対処するための指針」として公表されています。
この指針は、特別永住者や「外交」「公用」の在留資格を持つ者を除外しています。
指針では、企業が取るべき具体的な措置として以下の項目が挙げられています
・外国人労働者の募集・採用の適正化
・労働条件の適正化(均等待遇、労働条件の明示、適正な労働時間の管理など)
・安全衛生の確保(安全衛生教育、健康診断の実施など)
・社会保険の適用(雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険)
・人事管理、教育訓練、福利厚生の充実
・解雇の予防と再就職援助
また、外国人労働者を常時10人以上雇用する場合は、「雇用労務責任者」を選任する必要がありますが、この点に違反しても罰則はありません。
最低賃金法
最低賃金法は、労働者の生活の安定を図り、労働条件を改善するために、賃金の最低額を保障する法律です。この法律の目的は、労働者の生活水準の向上、労働力の質的向上、そして企業間の公正な競争を確保することにあります。
最低賃金法は国籍に関係なく、全ての労働者に適用されます。外国人労働者も日本人と同様に最低賃金が保証されており、日本の法律に基づいて賃金が支払われます。日本で働く以上、どの国から来た労働者であっても、日本の最低賃金が適用されます。
地域別最低賃金の設定
最低賃金は都道府県ごとに異なります。これは、各地域の物価や経済状況に応じて設定されるためです。地域別最低賃金は毎年10月1日前後に発表され、適用されます。
都道府県名 | 最低賃金 | 都道府県名 | 最低賃金 |
北海道 | 時給 960 円 | 大阪府 | 時給 1,064 円 |
青森県 | 時給 898 円 | 兵庫県 | 時給 1,001 円 |
岩手県 | 時給 893 円 | 奈良県 | 時給 936 円 |
宮城県 | 時給 923 円 | 和歌山県 | 時給 929 円 |
秋田県 | 時給 897 円 | 鳥取県 | 時給 900 円 |
山形県 | 時給 900 円 | 島根県 | 時給 904 円 |
福島県 | 時給 900 円 | 岡山県 | 時給 932 円 |
茨城県 | 時給 953 円 | 広島県 | 時給 970 円 |
栃木県 | 時給 954 円 | 山口県 | 時給 928 円 |
群馬県 | 時給 935 円 | 徳島県 | 時給 896 円 |
埼玉県 | 時給 1,028 円 | 香川県 | 時給 918 円 |
千葉県 | 時給 1,026 円 | 愛媛県 | 時給 897 円 |
東京都 | 時給 1,113 円 | 高知県 | 時給 897 円 |
神奈川県 | 時給 1,112 円 | 福岡県 | 時給 941 円 |
新潟県 | 時給 931 円 | 佐賀県 | 時給 900 円 |
富山県 | 時給 948 円 | 長崎県 | 時給 898 円 |
石川県 | 時給 933 円 | 熊本県 | 時給 898 円 |
福井県 | 時給 931 円 | 大分県 | 時給 899 円 |
山梨県 | 時給 938 円 | 宮崎県 | 時給 893 円 |
長野県 | 時給 948 円 | 鹿児島県 | 時給 960 円 |
岐阜県 | 時給 950 円 | 沖縄県 | 時給 896 円 |
静岡県 | 時給 984 円 | ||
愛知県 | 時給 1,013 | ||
三重県 | 時給 973 円 | ||
滋賀県 | 時給 967 円 | ||
京都府 | 時給 1008 円 |
違反時の罰則
最低賃金を支払わない場合、事業主は50万円以下の罰金が科される可能性があります。また、最低賃金を下回る賃金を支払った場合、過去2年間(将来的には最大5年間)の差額を支払う義務があります。この義務を怠った場合、さらに厳しい罰則が適用されます。
また、技能実習生などの特定の労働者にも、最低賃金法は適用されます。企業が技能実習生に対して最低賃金以下の賃金を支払うことは違法です。この違反に対しても、過去2年間の差額の支払い義務や罰金が科されます。
技能実習生について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
まとめ
外国人を雇用する際には、労働関連法律に対する理解が不可欠です。日本の労働法や移民法には、外国人労働者の権利や適切な雇用条件に関する規定が含まれています。これらの法律を遵守することは、企業の合法的な雇用活動を確保し、外国人労働者の保護にも役立ちます。したがって、適切な法的アドバイスや情報の提供が重要です。
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