2019年から、人材不足が深刻な問題となっている特定の産業分野において、外国人労働者を受け入れることを目的とした「特定技能」制度が開始されました。この制度は、日本国内の労働力不足を解消するために、特定の技能を持つ外国人労働者を積極的に雇用するものです。実際に、この制度を活用して特定技能外国人を雇用したいと考えている企業も多いことでしょう。
しかし、特定技能制度を利用する際には、企業や雇用主に対して定期報告が義務付けられていることに気付いた方も多いと思います。
そこで、この記事では、特定技能制度における定期報告の具体的な内容や報告方法について詳しく解説していきます。これにより、特定技能外国人を適切に雇用し、制度を正しく活用するための知識を深めていただければ幸いです。
特定技能制度の定期報告とは
特定技能制度の下で外国人労働者を雇用する企業や団体には、定期報告を行う義務があります。この定期報告は、雇用された特定技能外国人の就労状況や生活状況を把握し、適切なサポートを行うために必要不可欠な手続きです。これにより、外国人労働者が安心して日本で働き、生活できる環境を整えることを目的としています。
特定技能制度の定期報告の必要書類
定期報告には複数の書類が必要です。以下では登録支援機関の支援を受けている場合と受け入れ企業自身が全ての支援を行っている場合の二通りの場合に分けて解説します。
※必要書類は出入国在留管理庁「特定技能関係の申請・届出様式一覧」でダウンロードできますので、必要に応じてご確認ください。
参考:)「特定技能関係の申請・届出様式一覧 」 出入国在留管理庁
登録支援機関の支援を受けている場合
企業側が用意する書類は、以下の4種類です。
・受入れ・活動状況に係る届出書
・特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況
・賃金台帳の写し(特定技能外国人のもの・比較対象の日本人のもの)
・報酬支払証明書(給与が現金払いの場合に必要)
受入れ・活動状況に係る届出書
この書類には、受入れ企業が特定技能外国人をどのような業務に従事させる予定であるか、その業務がどのような環境で行われるかを詳しく記載します。具体的には、業務内容の説明、勤務地、労働時間、使用言語、労働環境などが含まれます。
また、企業が労働基準法や労働安全衛生法などを遵守しているかどうかをチェックするためにも使用されます。さらに、特定技能外国人が予定している業務が「特定技能」の枠組みに合致しているかも確認します。
特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況
ここでは、受け入れた特定技能外国人の個人情報(氏名、生年月日、国籍、在留カード番号)、雇用契約内容(契約期間、業務内容、勤務時間、休日)、住居地などを記載します。さらに、実際に支払われた報酬の額も報告します。
労働契約に違反していないかを確認するために使用されます。また、受け入れ企業が適切な管理体制を整えていることを証明する役割も果たします。労働条件の悪化がないようにするためのチェック機能も担っています。
賃金台帳の写し(特定技能外国人のもの・比較対象の日本人のもの)
賃金台帳とは、従業員に支払う給与の支払い状況や、勤務時間を記載した帳簿のことです。
労働基準法で定められている「法定三帳簿」のひとつであり、従業員を雇用するすべての企業(事業所)に作成・保管が義務付けられています。
特定技能外国人と比較対象の日本人労働者の賃金台帳を提出し、これらのデータを比較することで、同一労働同一賃金の原則が守られているかを確認します。
報酬支払証明書(給与が現金払いの場合に必要)
この書類には、現金で支払われた給与の詳細(支給額、支払日、支払先の氏名、受領者の署名など)が含まれます。また、従業員が確実に報酬を受け取っていることを保証し、トラブルを防止するためのものでもあります。
■登録支援機関について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください!
「登録支援機関」とは?特定技能制度における役割や費用、選び方について解説
受け入れ企業自身が全ての支援を行っている場合
ここでは、特定技能外国人の受け入れにおける支援計画を、自社で実施しているケース(登録支援機関に一部の支援のみ委託している場合も含む)について見ていきましょう。作成・届出が必要な書類は、以下のとおりです。
・受入れ・活動状況に係る届出書
・特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況
・賃金台帳の写し(特定技能外国人のもの・比較対象の日本人のもの)
・報酬支払証明書(給与が現金払いの場合に必要)
・支援実施状況に係る届出書
・1号特定技能外国人支援対象者名簿
・定期面談報告書(1号特定技能外国人用・監督者用)
上から4つの書類は、すべて支援を登録支援機関に委託するケースと変わりません。詳細については、前述した登録支援機関の支援を受けている場合を参照してください。
その他3つの書類は登録支援機関の支援を受けている場合では登録支援機関が提出しますが、自社のみですべての支援を行うまたは一部のみ登録支援機関からの支援を受ける場合は、企業が作成して提出しなければなりません。以下でそれぞれについて説明します。
支援実施状況に係る届出書
この書類は、企業が特定技能外国人に対して提供している支援が実際に行われていることを証明するものです。1号特定技能外国人支援計画書で実施予定としていた支援の実施状況について記入します。
1号特定技能外国人支援対象者名簿
支援を受ける特定技能1号の外国人労働者の一覧を記載した名簿です。名簿には、各外国人労働者の氏名、生年月日、国籍、支援実施状況などを記載します。
定期面談報告書
定期的に行われる面談の内容を記録する報告書です。面談は、特定技能外国人本人と、その監督者(企業の責任者など)それぞれを対象に実施されます。報告書には、面談日時、面談者、面談内容(業務、待遇、生活などのこと)、今後の対応策などが含まれます。
定期報告の提出先や提出方法は?
特定技能外国人の受け入れに関する定期報告は、出入国在留管理庁に提出します。具体的な管轄は、外国人労働者が働いている場所や企業の所在地に基づきます。
また提出方法は主に3つあり、窓口で提出する場合、郵送による場合、オンラインで提出する場合の3通りです。
また、具体的な提出先である地方出入国在留管理局又は同支局は出入国在留管理庁の「特定技能所属機関からの定期届出に関連してお問合せの多い事項について」を参考にしてください。
窓口で提出する場合
特定技能所属機関の本店の住所を管轄する地方出入国在留管理官署(空港支局を除く。)の窓口に直接書類を提出することも可能です。この方法では、提出時にその場で確認が行われ、追加の指示を受けることもできます。
また、窓口の受付時間は原則平日午前9時から同12時、午後1時から同4時までとなっているため注意が必要です。(手続により曜日又は時間が設定されている場合がありますので、地方出入国在留管理官署又は外国人在留総合インフォメーションセンターにお問い合わせください。)
郵送による場合
身分証明書の写しを同封の上、特定技能所属機関の本店の住所を管轄する地方出入国在留管理官署宛てに送付します。また、封筒の表面に朱書きで「特定技能届出書在中」等と記載してください。
また、消印ではなく届出期間内に地方入管局へ届いていなくてはいけないことに注意が必要です。
オンラインで提出する場合
出入国在留管理庁は、電子申請システム(e-Gov)を提供しており、企業はオンラインで定期報告を行うことができます。電子申請は、迅速かつ効率的に処理されるため、利用が推奨されています。また、利用には、事前に利用者登録が必要なため注意が必要です。
定期報告のための期間と提出期限
定期報告では、対象期間を四半期ごとに区切り、その期間についての受入れ状況等を届け出ます。
対象期間ごとの届出期間(書類の提出期限)は、下の表で確認してください。
報告対象期間 | 提出期限 | |
第1四半期 | 1月1日~3月31日 | 4月15日まで |
第2四半期 | 4月1日~6月30日 | 7月15日まで |
第3四半期 | 7月1日~9月30日 | 10月15日まで |
第4四半期 | 9月1日~12月31日 | 1月15日まで(翌年) |
期間を1月から3カ月ごとに区切り、対象期間が終わった翌日から15日以内に、年に4回書類を提出するというこ とです。
参考:)「特定技能制度定期届出書の記載方法と留意点」出入国在留管理庁
報告漏れや不備があった場合の罰則やリスク
特定技能定期報告は、出入国管理及び難民認定法により提出が義務付けられているため、規定期間内の届出がなかったり、虚偽の内容で届け出たりした場合は罰則の対象とみなされる可能性があります。
具体的には、提出期限を過ぎてしまうと、10万円以下の過料とその理由を記載した「報告遅延理由書」の提出という罰則の対象となりますので注意が必要です。また、特定技能の雇用契約に関する届出や特定技能外国人の活動状況の報告などに虚偽や違反が認められると、30万円以下の罰金が課されます。
加えて、法令違反行為とみなされる場合には、特定技能外国人の受け入れ停止や登録支援機関の登録取り消しを科される可能性もあります。
出典:)「出入国在留管理庁からのお知らせ~実地調査に御協力ください~」法務省
定期報告がもたらすメリット
定期報告を適切に行うことで、企業には以下2つのようなメリットがあります。
・多様性の証明
・外国人労働者の定着
多様性の証明
定期報告を適切に行うことで、外国人労働者を差別せず受け入れる社風があることの証明になり、新しく特定技能外国人を受け入れる場合でもスムーズに受け入れ業務を行うことができる。
外国人労働者の定着
定期報告を通じて、外国人労働者の就労環境や生活状況を把握し、必要な支援を行うことで、労働者の職場定着を促進できます。これにより、労働者の離職率が低下し、労働者に長く働いてもらうことで、企業の安定した運営が期待できます。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。今回の記事では特定技能制度における、定期報告について知っておくべきことを紹介しました。
定期報告には多くの書類が必要であり、かなりのコストがかかります。登録支援機関の支援を受けることも視野に入れつつ特定技能外国人を受け入れるべきでしょう。不明なことがある場合にはすぐに相談し、良い環境で特定技能外国人を受け入れられるようにしましょう。