人手不足が深刻化する日本では、外国人を採用する企業が増えています。特定技能外国人の雇用・受け入れを検討する方も少なくないのではないのでしょうか。その際に「生活オリエンテーション」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。
一方で、
・生活オリエンテーションの目的
・どんな情報をオリエンテーションで伝えなければいかないか
・実施方法や期間、注意点
などさまざまな疑問を持つ方も多いと思います。
本記事では、生活オリエンテーションの内容から実施方法、注意点ついて詳しくご紹介します!
生活オリエンテーションとは
生活オリエンテーションとは、日本で働く特定技能外国人が日本での生活にスムーズに適応できるよう、受け入れ企業が提供する情報セッションのことです。
これは、特定技能1号に該当する外国人に対して必須の支援であり、特定技能2号には適用されません。
これにより、文化や法律、生活習慣について理解を深めてもらい、トラブルを未然に防ぎます。
例えば、以下のような情報を提供しています。
・日本での生活一般に関する情報
・支援に関する情報
・公的手続きに関する情報
実施する目的
目的は日本の法律や交通ルールなど、生活する上で欠かせないルールについて外国人労働者に理解をしてもらうことです。理解をしてもらうことでトラブルを防ぎ、良好なコミュニケーションを築くことができます。このように外国人労働者が日本社会に順応し、地域社会との良好な関係を築きながら、生活を充実させることが期待されます。
生活オリエンテーションで伝える情報の内容は?
生活オリエンテーションで外国人労働者にどんな情報を伝えたらよいのか説明します。
伝えるべき情報は主に3つに分けられます。
・日本での生活一般に関する情報
・支援に関する情報
・公的手続き(相談や苦情)に関する連絡先情報
それぞれについて詳しく解説します。
日本での生活一般に関する情報
生活一般に関する情報は以下の表の通りです。
金融機関の利用方法
まず、金融機関の利用方法について説明します。銀行での入出金や振込方法、ATMの使い方や手数料について詳しく解説します。また、外国人が出国する際に銀行口座を閉鎖する手続きや、再入国時の口座継続利用についてもアドバイスします。
医療機関の利用方法
医療機関の利用方法についても重要です。症状に応じた医療機関の選び方や、受診時に必要な持ち物、例えば保険証の持参について説明します。また、アレルギーや宗教上の理由で治療に制限がある場合の対処法についても伝えます。
日本で違法となる行為の例
次に、日本で違法となる行為についても説明します。銃砲刀剣類や違法薬物の所持はもちろん、在留カードの不携帯、カードや保険証の貸し借り、銀行口座や携帯電話の譲渡などが違法であることを強調します。ATMでの不正引き出しや他人になりすましての受領行為、放置自転車の使用なども違法行為として説明します。
生活必需品の購入方法
さらに、生活必需品の購入方法についても案内します。地域のスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストア、家電量販店など、生活に必要な物品を購入できる場所を紹介します。
生活ルール
生活ルールやマナーについても触れます。地域ごとのゴミの分別方法や廃棄方法、収集日、粗大ゴミの捨て方などを説明します。また、騒音問題や近隣住民に迷惑をかけないための注意点、空き地や畑などの無断立ち入り禁止の場所についても伝えます。喫煙に関する規則や喫煙所の位置、禁煙場所についても説明します。
交通ルール・交通機関の利用方法
次に、交通ルールについてですが、日本の交通規則を理解することは事故防止に欠かせません。歩行者は右側通行、車両は左側通行であること、また自転車を運転する際には自転車損害賠償責任保険に加入する必要があることを説明します。さらに、自動車やバイクの運転には運転免許が必要で、その取得方法や保険加入についても案内します。
交通機関の利用方法も重要です。特定技能外国人が主に利用する公共交通機関とその利用方法を詳細に説明します。通勤に最適な公共交通機関、勤務先までの経路や所要時間、通勤定期や切符の購入・利用方法、交通系ICカードの使い方についても具体的に案内します。
防災情報の入手方法(緊急時)
最後に気象情報や災害時の情報入手方法についてです。気象情報や災害情報を確認できるホームページやアプリの利用方法を紹介し、情報の入手方法を確認します。気象庁のホームページでは多言語での情報も提供されているため、これを活用するように伝えます。また、外国人向けのコミュニティサイトがあれば、それも共有します。
支援に関する情報
支援に関する情報は以下の表の通りです。
所属機関に関する届け出
特定技能外国人が所属する受け入れ機関(特定技能所属機関)に関する届出は、以下の場合に必要です。いずれの場合も、14日以内に届出を行わなければなりません。
受入れ機関の名称や所在地が変更された場合
受け入れ機関の基本情報が変更された場合には、迅速に報告する必要があります。
受入れ機関が消滅した場合
倒産や事業所の閉鎖などで受け入れ機関がなくなった場合も届出が必要です。
雇用契約が終了した場合
受け入れ機関との雇用契約が終了した際には、すみやかに届出を行います。
転職した場合
新たな受け入れ機関と雇用契約を結んだ場合にも、14日以内に届出が必要です。
居住地に関する届け出
特定技能外国人は、日本に上陸した後、住居地について届出を行う義務があります。また、在留資格の変更や転居があった場合には、変更または転居の日から14日以内に新しい住居地を届け出る必要があります。
合理的な理由なく90日以上届出を行わなかった場合、在留資格が取り消される可能性があるため、注意が必要です。
社会保障及び税に関する手続き
社会保障や税に関する手続きは、適切に行わないと在留に関する申請が不許可となる場合があります。
社会保障に関する手続き
特定技能外国人は、健康保険や厚生年金保険への加入手続きが必要です。これらの保険料は給与から天引きされることが一般的です。また、国民健康保険や国民年金についても、適用事業所以外に所属する場合や離職時には、自身で手続きを行う必要があります。
税に関する手続き
特定技能外国人は、源泉徴収制度に基づき、所得税や住民税が給与から天引きされます。住民税の納付方法や、納税義務の発生期間、離職や転職後の納税方法についても理解しておく必要があります。
その他の行政手続き
その他にも、自転車の防犯登録や盗難・撤去時の対応など、各種行政手続きについての情報提供も行います。
個人番号(マイナンバー)制度についても説明が必要です。マイナンバーは行政手続きに利用され、写真付きのマイナンバーカードは身分証明書としても使用できます。市町村によっては、このカードを利用してコンビニエンスストアで住民票などの証明書を取得することもできます。
登録支援機関は、これらの手続きが円滑に行えるように、必要に応じて関係窓口へ同行し、書類作成や申請の補助を行います。特に、国民健康保険や国民年金の手続きについては、外国人本人が手続きを行わなければならないため、登録支援機関が積極的にサポートすることが求められます。
登録支援機関について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
公的手続き(相談や苦情)に関する連絡先情報
公的手続きに関する情報は以下の表の通りです。
実施方法と期間
生活オリエンテーションを行うための実施方法や期間は以下の通りです。
実施方法
生活オリエンテーションの実施方法は3つあります。
・対面形式
・オンライン形式
・録画動画の視聴
それぞれについて詳しく解説します。
対面形式
受入企業や登録支援機関の施設で、特定技能外国人に対して直接行う方法です。言語の壁や文化の違いに直接的に対処できることや、質疑応答に対して即時に回答できるなどの利点があります。一方、感染症対策などの観点から制限があることや、場所・時間の制限があるため遠隔地にいる人々は参加しづらいなどの懸念があります。
オンライン形式
テレビ電話やビデオ会議ツールを使用して、特定技能外国人に対して行う方法です。柔軟性が高く、場所や時間の制約が少ないため、遠隔地にいる人々にも利用されます。一方で、ネットワーク環境が無い人々の参加が難しいなどの懸念があります。
録画動画の視聴
事前に録画された動画を視聴してもらう方法です。自分のペースで学習できる利点がありますが、お互いコミュニケーションができないため、質問や疑問に対する即時の回答が難しいです。また、ネットワーク環境が無い人々は動画を見ることができないなどの懸念があります。
実施する期間
実施期間は2つのケースがあります。
・8時間以上の実施が必要なケース
・4時間以上の実施でよいケース
それぞれについて詳しく解説します。
8時間以上の実施が必要なケース
生活オリエンテーションは特定技能外国人が日本での生活や労働に必要な情報を理解するための重要な取り組みです。入管が求めるように、この情報提供を十分に理解するためには、8時間以上の時間が必要とされています。
4時間以上の実施でよいケース
また、技能実習2号や留学生等から特定技能ビザへの移行で、生活環境が変わらない場合でも、情報の提供が必要です。これは、特定技能制度に関連する法律や規制の理解、日本の労働文化や社会制度、生活環境に関する理解を再確認するためです。この場合でも4時間以上の時間を生活オリエンテーションの実施に割く必要があります。
特定技能外国人が円滑に日本での生活や労働を始めるためには、適切な情報提供とそれを理解するための時間を十分に確保することが重要です。
参考:「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」
実施する際の注意点は?
生活オリエンテーションを実施する際には5つの注意点があります。
・特定技能外国人が十分に理解できる言語で実施する
・環境に合わせて適切な内容を伝える必要がある
・確認書に署名してもらう必要がある
・定期的に実施する必要がある
・必要に応じて手続きに同行する必要がある
それぞれについて詳しく解説します。
特定技能外国人が十分に理解できる言語で実施する
特定技能外国人が十分に理解できるようにオリエンテーションをすることが原則です。生活オリエンテーションでは専門的な用語や普段慣れない内容も含まれているので、日本語をある程度理解している外国人であっても理解しにくい場合があります。
簡潔で理解しやすい説明になるように工夫することが必要です。また、特定技能外国人の母国語で資料を作成するなど、必要に応じて対応することが重要です。
環境に合わせて適切な内容を伝える必要がある
特定技能外国人が日本で生活する際に必要な情報は、彼らの住居地や生活環境に密接に関連しています。
例えば以下5つのような地域特有のルールや情報を伝える必要があります。
・ゴミ収集のスケジュールや分別方法
・公共交通機関の利用方法
・地域の医療機関
・緊急時の連絡先
・気候の変化に対する対策
環境に合わせて伝えなければならない情報はゴミ収集のスケジュールや分別方法、公共交通機関の利用方法、地域ごとの医療機関、緊急時の連絡先などです。また、特定技能外国人にとって日本は新しい環境です。冬季の寒さ対策や夏季の暑さ対策、積雪時の注意事項なども伝えましょう。これらの情報は、特定技能外国人が地域社会に溶け込み、安心して生活できるよう支援するために重要です。事前に地域調査を行い、彼らのニーズに合った情報提供を行うことが求められます。
外国人労働者の文化と価値観の違いについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
確認書に署名してもらう必要がある
生活オリエンテーションの実施が完了した際に、「生活オリエンテーションの確認書」に署名してもらいます。この確認書は、特定技能外国人が生活オリエンテーションを受けたことを証明し、理解したことを確認するためのものです。
定期的に実施する必要がある
生活オリエンテーションは1回だけでなく、必要に応じて定期的に実施する必要があります。
防災や防犯についてなど、緊急時の対応は生活するうえで非常に重要なことですので、繰り返し定期的に伝える方が良いでしょう。また、再確認することで今まで理解してなかった部分や誤って認識している部分を再度正しく理解することができます。
必要に応じて手続きに同行する必要がある
書類や内容の理解が困難な場合があるため窓口の案内だけでなく、同行してサポートすることが求められます。特に複雑な制度や手続きに関しては、十分な説明が必要です。
同行したほうがよい主に3つの手続きがあります。
・行政手続きや契約手続き
・国民健康保険や国民年金
・関係窓口
行政手続きや契約手続き
特定技能外国人が行政手続や契約手続きを行う際には、書類や内容の理解が困難な場合があるため窓口の案内だけでなく、同行してサポートすることが求められます。
国民健康保険や国民年金
特定技能外国人が国民健康保険や国民年金などの手続きについて、必要な書類を正確に作成し、適切な形式で提出できるように補助します。重要な手続きであるため、正確かつ完了した書類の提出が必要です。
関係窓口
関係窓口での手続きには、日本語の理解や書類の処理に関する困難がある場合がありますので、同行することが望ましいです。特定技能外国人が内容を十分に理解し、納得して承諾できるようにサポートします。特に複雑な制度や手続きに関しては、十分な説明が必要です。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。本記事では、生活オリエンテーションの内容、実施方法から注意点などを解説しました。
外国人労働者を採用することは、人材不足の解決だけではなく社内のグローバル化、活性化にも良い影響を与えます。外国人労働者を雇用する際には、生活オリエンテーションなどを実施して、外国人労働者が日本で円滑な生活ができるようにサポートをすることが重要です。