技能実習生を雇用したあと、日本語がうまく通じないといった理由から指示や業務内容の誤解が生じ、業務の効率が低下してしまうケースがよくあると思います。
本記事では十分に技能実習生が日本語を学び、企業で活躍できるように日本語教育の方法についてまとめました。是非本記事を参考に、技能実習生の日本語教育にアプローチしてみてください。
技能実習生の日本語レベルの現状
ここでは技能実習生が日本に来日した際の日本語レベルについて解説します。
技能実習生徒の日本語レベルはN4
順位 | 読み | 書き |
N1 | 新聞の論説や評論などの論理的で複雑な文章を理解し、深い読解力を持つ。 | 自然なスピードの会話や講義を理解し、論理構成や要点を的確に把握する。 |
N2 | 新聞や雑誌の記事、平易な評論などの文章を理解する。 | 幅広い場面で、まとまりのある会話やニュースを理解し、要点を把握する。 |
N3 | 日常的な話題に関する文章を理解する。新聞の見出しから情報の概要をつかむことができる。 | 日常的な場面で、自然なスピードの会話を理解し、内容を把握する。 |
N4 | 基本的な語彙や漢字を使った身近な話題の文章を理解する。 | 日常的な場面でゆっくり話される会話を理解する。 |
N5 | ひらがな、カタカナ、基本的な漢字で書かれた文章を理解する。 | 教室や身の回りの場面で、ゆっくり話される短い会話から必要な情報を聞き取る。 |
参照:日本語能力試験JLPT
技能実習生の多くは、出国前に送り出し機関で日本語を約半年かけて勉強していることが一般的です。技能実習生の日本語レベルはN4程度とされています。
N4レベルとは、読む力は基本的な語彙や漢字を使った身近な話題の文章を理解できるレベルです。聞く力は日常的な場面でゆっくりと話される会話を理解できるレベルです。
N4の技能実習生であれば、介護施設で就業可能なレベルです。N3レベルになるとコンビニで働く外国人と同じくらいのレベルで「読み」と「話す」ができます。
仕事の現場においてN4レベルだとゆっくりと話せば伝わりますが、日本人が話すスピードで話してしまうと理解が追いついていない場合があります。
そのため、日本人からするとコミュニケーションにストレスを感じることもありますが、最初はゆっくりと簡単な日本語で話すことが大切です。
■日本語能力試験について詳しく知りたい方は下記記事をご覧ください。
[企業向け]日本語能力試験は外国人採用で判断材料になる?実際の試験6つを比較
技能実習生が日本語ができない理由
ここでは技能実習生が抱える日本語習得に関する課題について解説します。
・日本語を話す機会が少ない
・仕事で使う専門用語が難しい
・日本語の勉強時間が確保しづらい
日本語を話す機会が少ない
技能実習生が抱える日本語習得に関する課題の一つに日本語を話す機会が少ないことが挙げられます。
業務中、日本語を話す機会も少しありますが、業務の中では圧倒的に、説明を聞いていることが多く自分から話す機会はあまりありません。また質問があっても他の人のみようみまねで解決できることが多く、中々話す練習をすることがありません。
技能実習生にとっては日本語を話すことを必要に感じている人が少なく、日本に来日して、話す能力があまり変わっていない技能実習生も多いそうです。
仕事で使う専門用語が難しい
技能実習生は建設、農業、介護など様々な分野の仕事につくことになります。これらの職業の専門用語は難しく、日本人でも覚えるのに苦労するような単語もあります。
技能実習生はこれらの職業の専門的な用語を覚えないと同時に日常で使う単語も覚えなくてはならず、なかなか専門用語を覚える時間を作れないという難しさもあります。
日本語の勉強時間が確保しづらい
技能実習生は研修で日本に来日しますが、実際は働くことが目的で、1日の大半を仕事に費やします。
そのため、仕事後に疲れて日本語を勉強する時間を確保するのが難しいです。またそもそも日本語教室が技能実習生が働いている時間の日中しかやっておらず勉強できないという問題もあります。
日本人と交流する機会が少ない
技能実習生の場合、普段話す人が同じ技能実習生の同僚と上司だけになってしまうことがあります。日本人とコミュニケーションを取る機会が圧倒的に少なく、外国人と日本人のお互いの文化的背景を理解する機会が少なくなってしまいます。
そのような理解がないことから思わぬことでトラブルやすれ違いが起きてしまうことがあります。日本人の考え方や文化を知ってもらう機会も積極的に設けることが大切です。
技能実習生の日本語教育期間はどのくらいか
ここでは技能実習生が日本語を学ぶ期間を以下の流れで解説していきます。
・日本に入国前
・日本に入国後
・日本での活動開始後
日本に入国前
技能実習生は日本に入国前に3~6ヶ月日本語を学んでいます。
技能実習生は、日本に来日することが決定したあとに現地送出機関で日本語学習を開始しています。最低3ヶ月は日本語を送出機関で学習しており、人によっては半年間学習している実習生もいます。送り出し機関では技能実習制度から簡単な日本語の読み書きや文化礼儀などを学んでいます。
日本に入国後
技能実習生は日本に入国後活動時間の1/6時間以上の講習を受けています。
日本に入国後は監理団体が技能実習生に講習を行い、日本語や日本での技能習得に関する知識を教えています。入国後の講習は、技能実習生の活動予定時間の1/6時間以上が行われます。技能実習生が2400時間の活動を行う場合、400時間の講習が行われます。
日本での活動開始後
活動開始後の日本語の学習時間は受け入れ企業や技能実習生本人に依存します。技能実習生のほとんどは入国前の送出機関、入国後の監理団体での講習で十分でないため、日本の文化や言語が理解できていないです。
そのため、受け入れ企業では様々な研修を準備して早く日本の文化に慣れてもらって、日本語を話せるようになってもらうことが大切です。
技能実習生への日本語教育方法
ここでは技能実習生が日本語を学ぶ方法について3つ紹介します。是非この3つを参考に技能実習生の日本語能力を向上を目指しましょう!
・日本語学校
・独学で勉強する
・オンライン日本語教室やe-ラーニングサービスを使う
日本語学校
技能実習生本人の意欲がかなりあるのであれば、日本語学校に通ってもらうのも1つの手です。働きながら、日本語学校に通うには技能実習生自身で時間を作らなければならないので少しハードルが高いかもしれません。
しかし日本語学校は法務省から告示校という形で指定を受けているため、サポートに手厚いです。加えて日本語の専門家による授業が受けられて、ビジネス用語や日本文化独特な返答方法、日常でつかうフレーズなど幅広く学ぶことができます。
日中だけではなく、週末や夜間にクラスを開講している学校もあるため、技能実習生の仕事時間に合わせて、通学することが可能です。
もしこれから技能実習生に日本語教室に通ってもらおうと考えている事業者は、ぜひGoogleなどの検索エンジンで「〇〇(地名) ビジネス日本語学校」と検索してみましょう。
近隣の日本語学校を見つけることができれば良いですが、もしない場合はオンラインでも開講している日本語教室もあるので詳細に調査してみましょう。
独学で勉強する
独学で勉強することは、「自分のペースで学べること、学習方法をカスタマイズできること」が利点として挙げられます。自己管理力が高まり、時間と場所に制約されずに学習が可能となります。
一方で、「正確な発音や文法が難しいこと、ネイティブとのコミュニケーションが限定的であること、モチベーション維持が難しいこと」は独学の難点として挙げられます。
また、独学ではフィードバックが限られるため、誤った学習習慣を身につけてしまう可能性も少なからずあります。総じて、独学は自己努力と時間が必要ですが、柔軟性と自己管理のスキルが向上し、基本的な言語スキルの獲得には役立ちます。
オンライン日本語教室やe-ラーニングサービスを使う
オンライン日本語教室やe-ラーニングでは、技能実習生が仕事が終わったあとなどに融通を利かせて勉強をすることができます。オンライン日本語教室やe-ラーニングの場合、簡単な日常会話から文法を教えてもらうことができます。そのためまだまだ基本的な会話が難しいと感じている技能実習生にオススメです。
以下に技能実習生にオススメのe-ラーニングサービスとオンライン日本教室について解説しているので是非参考にしてみてください。
技能実習生にオススメのe-ラーニングサービス
ここではオススメのe-ラーニングサービスの料金から特徴まで徹底解説していきます。これから技能実習生に日本語を学んでもらいたいと思っている事業者の方々は是非参考にしてみてください。
市進日本語eラーニング
市進日本語eラーニングではN5からN3以上レベルまで受講が可能です。いつどこでもWEBで映像授業が視聴可能です。
映像だけの学習だけではなく、日本語学校の講師がスクーリングを行い、映像授業とスクーリングを組みわせることでより学習の理解度を高めることができます。
グループ会社では日本語学校以外にも、「映像制作会社」「映像配信会社」があるため、各企業様のオリジナル教材を作成することが可能です。
MANABEL JAPANの日本語eラーニング講座
MANABEL JAPANの日本語eラーニング講座ではN5〜N1の技能実習生に幅広く対応していて、レベルに合わせて受講コースを選択することができます。
オンラインで受講が可能で動画講義から問題集まで全てオンラインで行うことができます。
もちろん技能実習生のスマホ1つで完結します。
全て日本人が講義を行っており、ベトナム語/英語/中国語の字幕が表示されるため、ほとんど日本語が分からない技能実習生でも安心して日本語を学ぶことができます。
Japany
Japanyは大手学習塾の教育の明光が開発した外国人向けの日本語学習サービスです。
「日本語が書ける」e-learninng、「職場で話せる」Lesson、「効果が視える」Testの3つのサービスと明光式学習理論により、最適・最短で日本語学習を行うことができます。
またJapanyでは外国人に日本語教育を行いたい企業の課題である、「研修の効果が出ていない」「学習管理ができない」「学習効果がわからない」といった課題を解決することが可能です。
技能実習生にオススメのオンライン日本語教室
ここではオススメのオンライン日本語教室の料金から特徴まで徹底解説していきます。これから技能実習生に日本語を学んでもらいたいと思っている事業者の方々は是非参考にしてみてください。
むすびば
むすびばではN5前半程度の日本語レベルから受講可能で、建設現場で使える日本語を習得することができます。授業を通して、現場に特化した双方向コミュニケーションを学ぶことができ、会話力だけでなく日本の職場の礼儀・習慣を身につけることができます。
オンライン日本語教室「ミラツク日本語」
オンライン日本語教室「ミラツク日本語」では日本語能力試験のN4,N3,N2レベルに特化したレッスンを受講することができます。技能実習生が好きな時間に受講できます。またミタツクには英語、ベトナム語が話せる講師が在籍しているため、実習生が理解できる言語とに日本語を組み合わせて効率的に理解ができます。
加えてレッスン動画は毎回企業に共有し、月一のフィードバックもあるため、企業担当者は技能実習生の日本語習得ペースを管理することが可能です。
MANABEL JAPANのオンライン日本語学校
MANABEL JAPANのオンライン日本語学校では業界や年齢層に合わせて独自のカリキュラムを作成することができます。最大4人までグループレッスンが可能でレベル別に段階的に学ぶことが可能です。
さらに1回50分3500円〜の低価格から学ぶことができます。
自社で技能実習生に日本語を教える方法3選
ここでは自社でもできる技能実習生に日本語を教える方法について解説していきます。
・仕事でよく使う言葉だけを教える
・日常でよく使う言葉だけを教える
・オンライン日本語教室を利用する又は日本語教師を招聘する
仕事でよく使う言葉だけを教える
技能実習生は1日仕事をした後に日本語の勉強をするため、1日で覚えられる日本語には限りがあります。そのため、無理に1日50個単語を覚えるという目標設定を行うのではなく、仕事でよく使われる単語に絞って少しずつ教えてあげることが大切です。
仕事で使われる単語はOTIT 外国人技能実習生のホームページに職種別にまとめられています。
英語、中国語、ベトナム語、インドネシア語、カンボジア語、タイ語など幅広い言語に対応していて、尚且つ音声ファイルもついています。是非参考にしてみてください。
日常でよく使う言葉だけを教える
わたしたち日本人が普段使う言葉を教えようとしても、実際どんな言葉を使っているか想像しづらいかもしれません。その場合は文化庁のサイトを参考にしてみてください。
レベル別に日常会話がまとめられています。18言語に対応していて、動画を中心にまとめられていて初めて日本語を学ぶ人も抵抗なく学び始められるように設計されているそうです。是非参考にしてみてください。
オンライン日本語教室を利用する又は日本語教師を利用する
技能実習生の日本語教育を企業のスタッフや採用担当者に一存することはよくあることだと思います。ただ、技能実習生の日本語教育を完全に企業や採用担当者だけに一存することはオススメできません。
日本語教育は、外国人材が母国語にない発音を習得したり、日本語のレベルに合わせた学習を計画したり、ビジネスに関するフレーズや日本文化を教えることを含みます。
これらの要素には専門的なスキルが求められます。
徒労に終わることなく日本語力を向上させるためには、日本語教師の招聘や先ほど紹介したオンライン授業の導入、専用のカリキュラムや教材の活用など、適切な手段を検討しましょう。
■外国人の日本語教育について詳しく知りたい方は下記記事をご覧ください。
外国人労働者への日本語教育はどうするべき?動機付け方法についても徹底解説!
【技能実習生向け】無料で使える日本語教材3選
技能実習生を受け入れている企業の方々の中には技能実習生に日本語を教える際、おすすめの教材を選ぶのに悩まれている方も多いかもしれません。そこで、無料で使える日本語教材について解説していきます。
つながるひろがる にほんごでのくらし(文化庁)
文化庁のサイトでは日本で暮らす外国人向けに日本語でコミュニケーションを取れることを目指して、よく使われる日常会話をまとめています。このサイトではレベルや学習シーンに合わせて学習コンテンツを選択することができます。
動画での解説があるため、実際使われるシーンをイメージしながら学ぶことができます。
特徴
・日常会話に特化
・レベル別
・対応言語が豊富:中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、英語、フィリピン語、フランス語、インドネシア語、クメール語、韓国語、モンゴル語、ミャンマー語、ネパール語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語、タイ語、ウクライナ語、日本語
日本語教材・日本語教育アプリ(OIIT 外国人技能実習機構)
OIIT 外国人技能実習機構が出している日本語教材の特徴は、職種別に言語を学べることです。したがって、実際の業務の言葉を覚えたい時に使うサイトです。
このサイトでは職種別の言葉で安全衛生や品質管理といったようにテーマ別に学ぶことができます。加えて、英語、中国語、ベトナム語、インドネシア語、カンボジア語、タイ語など幅広い言語に対応していて、尚且つ音声ファイルもついています。アプリも付属しているため、技能実習生の自学自習用にも使えるだけではなく、実際に企業の担当者様が教えるための教材としても役立ちます。
特徴
・技能実習生が働く職種別に特化
・レベル別
・アプリ
・対応言語:英語、ベトナム語、中国語、タガログ語、インドネシア語、タイ語、カンボジア語、ミャンマー語
日本語学習ウェブサイト「ひろがる」
日本語学習ウェブサイト「ひろがる」では日本語と同時に日本文化理解を深められるサイトになっています。日本語を学び始めたばかりのJF日本語教育スタンダードのA1、A2レベル(入門~初級)の日本語力でも理解が深められる教材になっており、12トピックに関する日本の情報を得ることができます。技能実習生にも日本文化を知ってもらい、日本での生活が充実できるようなコンテンツになっています。
特徴
・日本文化理解を深められる教材
・A1、A2レベルからでも学習可能
・お寺、魚、武道、アニメ・漫画など幅広いトピックを学べる
・音声ガイドあり
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まとめ
いかがだったでしょうか?技能実習生の日本語能力は最初はN4のことが多いです。ただ企業のサポートによりN3以上の評価がもらえるようになる技能実習生もいます。長く働いてもらい、様々なスキルを身に付けてもらうためにも日本語の習得は必須です。そのため、企業は献身的に日本語教育のサポートをしていきましょう。