技能実習

技能実習制度が廃止?新たに登場する新制度「育成就労」も含めて解説!

「技能実習制度が廃止される」といったニュースを目にしたことはありますか?実際、企業の採用担当の方々はこのニュースを目にして驚かれた方も多いかもしれません。

そこで今回は、

・なぜ技能実習が廃止されるのか
・新たにとって代わる新制度「育成就労」とは
・制度移行による企業への影響、対策とは

など、まるごと解説します!

そもそも技能実習制度とは

技能実習とは、べトナム、フィリピンなどの開発途上地域出身の外国人に日本の技術を教え、彼らが自国の発展に寄与することによって、国際貢献することが目的の受け入れ制度です。

技能実習制度のメリット

この制度によって得られるメリットは主に2つあります。

・母国への技能移転
・日本企業の人手不足解消

これらについて解説していきます。

母国への技能移転

技能実習は、実習生が母国に技術を持ち帰ることによって、母国への技能移転をすることが目的です。しかし、あまりに日本での滞在期間が長いと、本来の目的である、「母国への技能移転」の実現をすることができません。よって、日本に在留出来る期間は最長でも5年と定められています。

日本企業の人手不足解消

また、この制度によって日本の企業も人手不足を解消できるというメリットもあります。
出入国在留管理庁によると、技能実習生は2022年6月末時点で約33万人もの技能実習生が日本で働いています。
出典:【在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表】 | 出入国在留管理庁

技能実習制度のメリットを2点紹介しましたが、注意が必要なことがあります。
それは、「技能実習は実習生が母国に技術を持ち帰ることによって、母国への技能移転をすること」が目的であり、日本企業の労働力確保というメリットは副産物です。つまり、実習生を「労働力」として長時間、低賃金で雇用することは制度の趣旨に反します。

なぜ廃止?技能実習制度の問題点

一見すると双方の国にメリットがあり、廃止する理由がないと思われるかもしれません。
しかし、職場から失踪する、不法就労する実習生が多発するなど技能実習制度の問題点が浮き彫りになってきました。

主なものとして、

・「労働者」として扱われている
・転籍ができない
・国際的な批判がある

などが挙げられます。今回はこの3点について見ていきましょう。

労働者として扱われている

先ほど紹介した通り、母国への技能移転が技能実習の目的であるため、日本の労働力確保のために実習生を搾取することは禁止されています。しかし、現状は労働力確保を目的として実習生を受け入れている企業が多く、理念と実態がかけ離れてしまっているのです。

転籍ができない

また、実習生が転籍不可能であることも理由に挙げられます。
技能実習のしくみとして、実習生は特定の雇用主に紐づけされています。
しかし仮に、配属された実習先でハラスメントを受けた場合でも、実習生の転籍は原則不可能となっているため、実習生が一方的に不利益を被るケースも発生していました。この問題により、実習生が配属企業から失踪してしまうという、別の問題も発生しているのが現状です。

国際的な批判がある

技能実習制度が国際的に批判されている、という現状もあります。
2023年のアメリカ国防省の報告でも、「日本の技能実習制度では労働搾取が行われている」と、日本のこの制度に反対しています。

労働搾取の具体例に、

・長時間勤務を強制される
・低賃金で雇用されている
・ハラスメント、パワハラを受ける

などが挙げられます。

アメリカ国防省は、先ほどの報告で「最低基準を完全に満たしていない」とし、4段階中下から二番目である、「対策不十分」としました。
これらの背景より、日本は技能実習制度を廃止したと考えられます。

出典:)「2023年人身取引報告書(日本に関する部分)|在日米国大使館と領事館

いつから廃止なのか

2024年4月現在、技能実習制度が廃止されることは既定路線ですが、まだ具体的な日程が定まったわけではありません。
政府は2027年にも新制度開始を見込んでいるため、あと3年ほどで技能実習制度が廃止される予定となっています。

【新制度】育成就労とは

育成就労制度とは、現行の技能実習制度に代わる新たな外国人雇用の制度です。2024年3月15日に政府が閣議決定しました。

この新しい制度により、従来の外国人技能実習制度は廃止され、新たに育成就労制度が創設されます。特定技能1号水準の技能を有する人材を育成することや人材確保が主な目的です。

育成就労制度の詳しい内容については以下の表をご覧ください。


出典:)「改正法の概要(育成就労制度の創設等)|厚生労働省」

技能実習制度からの変更点

技能実習制度の問題点は、理念、目的と実態がかけ離れていることでした。技能実習制度に変わる新制度、「育成就労」では、この点を中心として技能実習制度の問題点を発展的に解消していくことが目的となっています。

変更点は主に5つあります。詳しくは以下の表をご覧ください。

出典:)「改正法の概要(育成就労制度の創設等)|厚生労働省」

ここでは、技能実習制度からのいくつかの具体的な変更点に着目していきましょう。

代表的なものに、

・人材確保と人材育成を目的とする
・外国人材に日本を選んでもらえるように、キャリアパスを明確にする
・外国人材への人権確保のため、転籍を可能にする

などがあります。

人材確保と人材育成を目的とする

技能実習の目的は「国際貢献」でしたが、実際は、「日本企業の人手不足を解消する手段であり、待遇もあまり良くない」といった、制度の目的と実態が乖離していました。
これにより、国際的な批判を浴びるなどのマイナス面が生まれていたと考えられています。この点を解消するため、そもそもの目的を、「企業の人材を確保し、外国人材を育成する」という、実態に即した方向性へ変更した、というのが流れとなっています。

キャリアパスを明確にする

以前の目的は「国際貢献」でしたが、「人材育成と人材確保」が目的になったことにより、以前にも増して日本を選んでもらうだけのメリットを明確化する必要性が生じました。
そのため、外国人材が日本に来てどのようなキャリアを形成するか検討するために「キャリアアップの道筋を明確化」という方向性が企業に向けて示された。

外国人材への人権確保のため、転籍を可能にする

技能実習制度では、仮に実習先企業が暴力やハラスメントなどが横行している悪質な環境でも、転籍が認められていません。そのため、外国人材の人権が保障されていない、という懸念点がありました。
この転籍についても、育成就労ではある条件を満たすことによって可能となっています。

具体的な条件として、

・暴力、ハラスメントを受けているなどのやむを得ない事情がある場合
・同一の受け入れ先での就労期間が1年を超えた場合
・日本語能力A1相当以上の試験に合格している場合

などがあります。

新制度移行に伴う注意点

【新制度】育成就労では受入れ可能な人数・職種の範囲が狭まります。

技能実習制度では、幅広い職種が対象となっており、令和6年5月1日現在では以下のように定められています。

職種数:90職種
作業数:165作業

一方、育成就労制度は、受入れ可能な職種が特定技能と同一分野に限定されています。
対象となる職種は以下の12分野に絞られています。

・介護
・ビルクリーニング
・建設
・農業
・漁業
・飲食料品製造業
・外食業
・宿泊業
・自動車整備
・航空業
・製造業(機械金属、電気・電子、食品製造など)
・船舶業(造船・船用工業)

技能実習と育成就労の違いについては以下の通りです。
以下の職種は、現段階において育成就労では受入れが出来なくなる可能性があります。

繊維・衣服関係
コンクリート製品製造
ゴム製品製造
印刷系
スーパーマーケット内の食料品製造
輸送系機械・器具製造
紙器系製造
木材加工
1年のみの実習

受け入れ企業への影響

制度が変更となったことにより、受け入れ企業にも影響が及ぶと考えられています。

主に考えられる点は4つあります。

・外国人材に費やしたコストを回収できずに転籍される恐れ
・転籍によって都市部への人口集中と地方の人手不足が加速
・一定の日本語能力を持った人材を確保しやすくなる
・受入れ可能な人数・職種の範囲が狭まる

これらの影響が考えられます。それぞれについて詳しく解説します。

外国人材に費やしたコストを回収できずに転籍される恐れ

育成就労制度では、外国人労働者の人権保護と権利向上が強調されており、転籍の範囲が拡大されています。
そのため、外国人材の採用や教育に費やしたコストを回収する前に転籍される恐れがあります。

転籍によって都市部への人口集中と地方の人手不足が加速

新制度が施行されることで、外国人材がより良い待遇を求めて都市部へ流出する可能性が高まります。都市部は通常、給与水準や生活環境が地方よりも良いため、外国人材が都市部へ移動する動機となりえます。これにより、地方での人手不足がさらに深刻化する恐れがあります。特に地方の中小企業や小規模事業者にとって重大な課題です。

地方の中小企業や小規模事業者が取るべき対応は以下で解説しています。

一定の日本語能力を持った人材を確保しやすくなる

育成就労制度では、日本語能力の取得が要件となり、より具体的に日本語能力の向上を図る仕組みが導入されています。具体的には、外国人が就労開始前に、日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格することを求めています。
または、相当の日本語講習を受講することが要件とされています。

日本語能力を持った人材を確保するメリット

・業務の円滑化
・安全性の向上
・コミュニケーションの円滑化
・職場への適応

それぞれについて詳しく解説します。

業務の円滑化:日本語能力が高いことで、業務指示を正確に理解し、業務を効率的に行えるようになります。

安全性の向上:安全指示やマニュアルを正確に理解することで、労働災害のリスクが減少します。

コミュニケーションの円滑化:同僚とのコミュニケーションが円滑になり、チームワークが向上します。

職場への適応:日本語を話せることで、外国人材が職場に迅速に適応し、職場環境に溶け込みやすくなります。

人材不足が発生する

育成就労制度は、技能実習制度に比べて受け入れ分野が狭く設定されています。また、受入れ可能な職種が特定技能と同一分野に限定されています。そのため、技能実習制度で受け入れ可能な分野であっても、育成就労制度の対象外となる分野では引き続き人材不足が発生する可能性があります。

育成就労への制度移行により外国人材への大きなメリットが見込める一方で、これまでよりも人材不足が問題になる、ことを念頭に置く必要があると言えるでしょう。

新制度が始まるに当たって企業が対策すべきこと

現在、技能実習制度を利用している企業は、実習生の転籍が可能となることなどにより、人材不足に陥る可能性も否定できません。
よって、今後の新制度への対応を検討することが大切だと言えるでしょう。

具体的には、以下3つ挙げられます。

・人材派遣の導入
・労働環境の整備
・異文化コミュニケーションの改善

それぞれについて詳しく解説します。

人材派遣の導入

人材不足が課題の企業は、外国人材だけでなく、人材派遣を利用することもおすすめです。外国人材を採用する場合、日本の文化などを含め1から教育する必要がありますが、人材派遣の場合、既に一定のスキル、技術を身につけている人材を確保することも可能です。また技術的な観点以外にも、派遣会社との提携により雇用や求人を任せることができるなど、時間的なコストの削減にも繋がります。

人材紹介サービスについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください!
特定技能人材紹介会社おすすめ5選!雇用手順や注意点について徹底解説

労働環境の整備

「労働環境の整備」は、外国人材を採用する場合のみならず、どのような人材を採用する場合においても大切です。しかし、馴染みのない異国の地に働きに来る外国人材の場合、なおのこと重要でしょう。

具体的な労働環境の整備とは、

・待遇の改善
・職場環境の改善
・キャリアアップの機会提供
・地域社会への適応支援
・制度の活用

などが挙げられます。
それぞれについて詳しく解説します。

待遇の改善

給与の見直し:都市部と競争できる給与水準を確保する。
福利厚生の充実:住居手当、交通費、健康保険などの福利厚生を強化する。

職場環境の改善

職場環境の整備:快適で安全な環境を提供する。
労働時間の管理:適正な労働時間の管理と、休暇制度の充実を図る。

キャリアアップの機会提供

技能向上の支援:教育訓練や資格取得支援を通じて、キャリアアップの機会を提供する。
昇進のチャンス:昇進の道を明確にし、やりがいを感じられるようにする。

地域社会への適応支援

生活支援:日本語学習支援や生活相談など、日常生活におけるサポートを提供する。
地域との交流促進:地域社会との交流イベントを開催し、地域に溶け込む機会を作る。

制度の活用

助成金や補助金の利用:外国人材受け入れに関する政府の助成金や補助金を活用し、財政的な負担を軽減する。
地方自治体との連携:地方自治体と連携し、地域全体で外国人材を支援する体制を整える。

雇用までにいかに魅力を伝えるか、という点も大事ですが、雇用後に人材が転籍せずに定着するような環境整備が、制度移行によって人材不足に陥ることへの回避手段といえるでしょう。

異文化コミュニケーションの改善

日本と海外では文化や価値観が違う点に注意する必要があり、お互いの文化や価値観を理解していく必要があります。そんな時に異文化コミュニケーション研修を実施しましょう。

異文化コミュニケーション研修では、多様な価値観を理解し、自分の考えを分かりやすく伝えるための基本的なコミュニケーションスキルを学びます。
今後も継続的に外国人採用を実施する場合は、研修サービスを提供する専門家に任せましょう。正確にナレッジを吸収できれば、自社だけで実施できるようにもなるでしょう。

外国人採用後の流れ、注意点について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
外国人採用の注意点は?募集や採用時、採用後の3つの視点から解説!

外国人エンジニアの採用ならRISE for Business

WIRISE RISE for Business

株式会社WILLTECが運営する外国人エンジニア紹介サービスRISE for Businessを利用すれば、効率的に外国人エンジニアの採用を行えます!

初期費用0円
・3つの料金プランから自社の予算・希望サービスにあったものを選択
・ユーザーは日本語学習者100%、理系大卒・院卒・専門卒100%
1週間以内応募71.4%
・これまで約1300人の外国人人材を仲介

ご興味のある方はぜひお問合せください!
お問い合わせ先:https://www.risefor-business.com/landing/top

まとめ

今回は、技能実習制度の廃止と、新制度「育成就労」について紹介しました。

特に大事な点として、

・制度の目的が実態に即したものになること
・外国人材への待遇が見直されること
・転籍が可能になることによって、これまで以上に企業のアピールをする必要性が生じること

これら3点が挙げられます。

制度の移行により企業の対応にも変化が求められていますが、ぜひこの記事を参考にして今後の方針を立てていただけると幸いです。






    外国人採用に関するご相談はこちらから

    外国籍エンジニアの採用ならRISEfor